2019年1月11日金曜日

【本を読む人だけが手にするもの】



藤原和博氏の心に響く言葉より…


「成熟社会」については、これまで講演でも書籍でも繰り返し言及してきた。

長年にわたって同じことを言い続けているのには、れっきとした理由がある。

日本はすでに成熟社会に移行して久しいというのに、それを現実のものとして理解している人がとても少ないからだ。

私は、この成熟社会というものに対する理解がないまま、読書の意味を考えることはできないと思っている。


それはひと言でいえば、20世紀型の成長社会が象徴する「みんな一緒」という時代から、21世紀型の成熟社会が象徴する「それぞれ一人一人」という時代に変わったのである。

電話の変遷を考えるとわかりやすい。

かつて、電話は一家に1台置かれた状態が常識だと考えられてきた。

電話機自体の進化とともに親機を中心に子機が増えていくが、電話回線が一家に1本という「みんな一緒」の固定電話であることに変わりはなかった。

ところが、バブル崩壊とともに大きく変化が起こった。

1993年に1.4パーセントだった携帯電話の普及率は、1998年には25パーセントにまで急上昇した。

その後に見せた急速な普及は、みなさんが実際に体験したとおりである。

「みんな一緒」の固定電話から、「それぞれ一人一人」のケータイ電話になってきたことが、時代の変化を如実に表している。


「みんな一緒」の時代には、日本人にはパターン化した幸福論があった。

日本人が共通の正解として持っていた「みんな一緒」の幸福論だ。

お父さんやお母さんや先生の言うことを素直に聞いて、「早く」「ちゃんと」正解にたどりつける「いい子」にしていると、「よい高校」や「よい大学」に入ることができる。

「よい大学」に入ることさえできれば、上場企業や有名企業などといったいわゆる「よい会社」に入れたり、安定した公務員になったりすることができた。

そこにどうにか潜(もぐ)り込むことができさえすれば、少なくとも課長くらいにはなれて、それなりの金額の年収を手にすることができた。

よほど大きな問題さえ起こさなければ、定年まで勤め上げることができる。

そうすると、まとまった金額の退職金を手にすることも可能だ。


これが、20世紀型の成長社会における典型的な日本人としての幸福論だった。

こうした「共同幻想」を、みんなが一緒になって追い求めていた時代なのである。

しかし、成熟社会になると、ただやみくもに頑張っているだけでは「みんな一緒」の幸せをつかむことはできなくなる。


成熟社会では、「それぞれ一人一人」が自分自身で、世の中の流れと自らの人生とを鑑(かんが)みながら、自分だけの幸福論を決めていかなければならない。

それぞれ一人一人が自分自身の幸福論を編集し、自分オリジナルの幸福論を持たなければならない時代に突入したのである。

「それぞれ一人一人」の幸福をつかむための軸となる教養は、自分で獲得しなければならない。

そのためには、読書が欠かせないというところに行き着くのだ。


親が教えてくれるのは、親の生き方であり、親のやり方だ。

ところが、その親たちは、黙っていても7割方が幸福になれる時代を駆け抜けてきた人たちなのだ。

親の言うとおり、先生の言うとおりに生きたとしても、うまくいく保証はひとつもない。

彼らにとって成熟社会は、未知の世界だからだ。

だとしたら、自ら切り拓くしかないだろう。

だからこそ、人生の糧(かて)を得る手段として読書をする必要があり、教養を磨く必要があるのだ。


『本を読む人だけが手にするもの』日本実業出版社





本書の中で藤原氏はこう語る。

『本を読むか読まないかで、報酬の優劣は決まってくる。

本を読むことで限りなくエキスパートの報酬水準に近づいていくか、本を読まずに限りなくフリーターの報酬水準に近づいていくかという分かれ道だ。

いっぽう、さまざまな仕事のなかで時間あたりに稼ぐ効率が最も高いのは講演である。

ビル・クリントン氏のようなアメリカの大統領経験者になると、1回の講演で数千万円を稼ぎ出す。

大統領や首相経験者でなくても、講演は稼ぐ効率が高い。

日本の有名人クラスでは、1時間あたり100万円ぐらいになる人もいる。

さまざまな分野で「一流」と呼ばれる人は、話すだけで1時間あたり100万円を稼ぐ。

その根底にあるのは、聴衆を満足させるだけの知識だ。

彼らは、その知識を得るために必ず本を読んでいる。

もちろん、聴衆が期待しているのは、講演者が本で得た知識ではない。

むしろ、だれも聞いたことがない、その人が実際に体験したことの数々だろう。

しかし、人間はすべてのことを体験することはできない。

だとすると、資料を読み込んだり、信頼できる書き手の著書を読んだり、信頼できるネットワークからの情報を得て、それに自らの体験を乗せて語っているはずだ。

ということは、1時間あたりに生み出す付加価値の総量を上げるためには、本を読むことが欠かせないといえるのではないだろうか。』



現代は、変化の激しい、先の見えない時代だ。

「今まで通り」というような前例踏襲では、何人(なんびと)もこの時代を乗り切ることはできない。

それは、お手本のない時代だと言ってもいい。

自分の頭で考え、自ら解(かい)を求めていかなければならない。

その元となるのが、読書による教養や知識や情報だ。


「本を読む人だけが手にするもの」

読書の習慣を身につけたい。


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