プロフィール

2020年5月31日日曜日

克己


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「自らに勝つ者は強し」
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1、あまえ

2、うぬぼれ

3、おごり

4、マンネリ

5、やっかみ

──経営者はこの五つの心の病気に必ず罹る、
とユニ・チャーム創業者の高原慶一朗氏が言っている。

徒手空拳で起業し二千億円企業にする過程で、
何回か、いずれかの病気に罹り、
その度に会社がおかしくなった、
と率直に吐露されている。

経営者だけではあるまい。

人は誰しも、その人生の途上でこの五つの病に
侵されるのではないだろうか。


この心の病に勝つこと。

それこそが自らに勝つということである。


常岡一郎という人がいた。

明治三十二年生まれ。
慶應義塾大学在学中に結核になり、
学業を捨て闘病、求道の生活に入った。

「すべてのものには中心がある。
 その中心からずれたとき、
 人間は、家庭は、個人は、集団は、企業は、
 国家は、人類は、みんな苦しむ。

 課されていることを中心にするのだ」


この真理を体得し、月刊誌『中心』を発行。
主幹として五十年間、毎号執筆。また中心同志会を結成し、
毎月全国主要都市で講演会を開催し続けた。
そういう人である。

この常岡氏に次の言がある。


「勝つ。この勝ち方にもいろいろある。
 喧嘩に勝つ。やせがまんや屁理屈で勝つ。
 それに勝っても他人は喜ばない。
 人を苦しめることになる。

 これでは人の心も天の心も暗くなる。
 天、人、我、共に喜ぶ。
 そんな勝ち方は"われに勝つ"ことである。

 (中略)

 この場合のわれとは何であろうか。
 それは自己の我執である。
 わがままである。きままである。
 朝寝、無精、屁理屈……である。

 これに打ち克って朝も早く起きる。
 人のいやがることを、いそいそと果たす。
 わがままを捨てて勤めきり、つくしきる。
 そうして人を喜ばせる。
 これが"われに勝つ"ことである」


常岡氏は昭和六十四年、九十歳で亡くなられたが、
人の悩みを救うべく生涯を捧げた人の言葉は
平易明快、力強い。


「人に勝つ者は力有り。自らに勝つ者は強し」


と『老子』(第三十三章)は言う。


他人と争ってこれを打ち負かす者は力が
あると言えるが、本当の強者ではない。
私欲私情を克服できる者、
すなわち私心に打ち勝つことができる者こそ、
真の強者である、ということである。


王陽明もまた、同じようなことを言っている。


「山中の賊を破るは易く、
 心中の賊を破るは難し」


克己は古来、聖賢が等しく目指した道である。

思えば、天は人間にだけ克己という心を発達させた。
その心があることによって、人間の進歩向上はある。
そのことを我々は肝に銘じたいものである。

最後に、新井正明氏(住友生命保険元名誉会長)の
言葉を紹介する。


「暗いところばかり見つめている人間は、
 暗い運命を招き寄せることになるし、
 いつも明るく明るくと考えている人間は
 おそらく運命からも愛され、
 明るく幸せな人生を送ることができるだろう」

「自らに勝つ」ことに腐心してきた人の
尊い言葉である。

『プロの条件』
致知出版社刊 (藤尾秀昭・著)


致知出版社様メルマガよりシェアさせていただきました。


押忍






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