プロフィール

2023年10月30日月曜日

『プライドを
傷つけない気遣いなんです』

* * * * * * * * *

「赤塚先生は、毎晩、
編集者たちを引き連れ、飲み歩いては、
新宿の『アイラ』というバーで
タモリと合流する。
キャバレーの噴水から、
裸のタモリがイグアナの真似で
出てきたり、
新しい遊びを考えるのが日課でした」

そんなある晩、
赤塚がタモリに絡み始めた。

「お前、売れ出したと思って
いい気になるなよ」

タモリも色をなし、
「そんな言い方ないだろ、
売れない漫画家に言われたくないよ」
とやり返す。

周りが必死に止めるが、
手にした水割りをぶっかけ、
ついには取っ組み合いに。

タモリを羽交い絞めにして鼻の穴に
落花生を詰め込む赤塚。

すると今度はタモリが
グリーンアスパラにマヨネーズを
つけて赤塚の鼻に突っ込む……。

「ようやく我々も
『あれ?おかしいな』と気づく。

要は、2人で
綿密に仕組んだギャグだったわけです。

先生の持論は
『バカなことは本気でやらないとダメ』。
遊びの時に気を抜くと、
『ふざけるな!真面目にやれよ』
と叱られる(笑)」

上京してまもないタモリさんに、
赤塚さんは自分が住んでいた
目白の高級マンションを明け渡し、
自分は木造2階建ての仕事場で
寝泊りしていたといいます。

その理由はというと…。
「タモリは今まで会ったことのない、
ものすごい才能だ。
ああいう都会的でしゃれたギャグを
やる奴は、贅沢させないと。
貧しい下積みなんかさせちゃダメだ」

その10年後。

仕事場を訪ねた担当者に、
赤塚さんは1通の通帳を見せました。

『タモリがさあ、
自分の会社の顧問になってくれって
言うんだよ』。

そこには毎月30万円ほどの
決まった額が振り込まれていました。

当時、
先生は連載がひとつもなくなって、
不遇の時期だったんです。

またタモリは
『先生、あのベンツ乗らないでしょ。
1千万円で譲ってよ』
『キャンピングカー、500万で譲って』
と言っては、代金を払ったといいます。

先生のプライドを
傷つけない気遣いなんです」

むろん赤塚もその思いを察していた。

「『タモリの会社なんてホントは
あるのかどうかもわからないしさ、
ああやって俺のこと
助けてくれてるんだろうな』
と言っていました。

いい話だなと思って、
通帳をよくみると、
1銭も使っていない。

『そりゃそうだよ。
芸人なんて2年で飽きられるだろ。
そうなったらこの金で
俺がタモリを喰わせてやるんだ』と。

赤塚先生が一枚上手だった」

        週刊文春から

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お互いの才能を認め合いながら
気遣い合う友情が
ステキだと思いました。
才能以上に友情が
羨ましいですね。

タモリ 赤塚不二夫 弔辞

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