プロフィール

2015年9月21日月曜日

今日の言葉3

本日、三つ目の今日の言葉となります。


宜しくお願い致します。





───────────────────────

    『致知』2006年11月号

 「〈佐賀のがばいばあちゃん〉に
             学んだがばい人生観」

       島田洋七(漫才師)



島田 僕は広島で生まれて間もなく
   父親を原爆症で失い、母が居酒屋をやって
   一所懸命育ててくれていました。

 だけど家で留守番をしていると母が恋しくってねぇ。
 夜中に家を抜け出しては、スラム街を通って
 店まで母に会いに行くものだから、
 母も心配になって、
 佐賀の田舎にいたばあちゃんのところに
 預けられることになったんです。
 8歳の時でした。
 

記者 あぁ、そういう事情で。

 
島田 しかし、僕がばあちゃんに
   預けられたタイミングは最悪でした。

 女手一つで7人の子を育て上げたばかりで、
 やっと肩の荷が下りたところだったんです。
 
 でもまだまだ貧しい時代でしょう。
 子どもたちも自分のことで精いっぱいで
 ばあちゃんに仕送りできる余裕はないから、
 家計は当然苦しい。
 夕飯も食べられない日もあったくらいだった。
 
 だからばあちゃんにとって、
 育ち盛りの僕を預かるなんて、
 苦労を背負い込む以外の何ものでもなかった。

 でもばあちゃんは、夫を亡くして
 懸命に働いている娘の辛さが
 よーく分かっていたから、断らなかったんです。


記者 それがおばあ様との
   生活の始まりだったのですね。

 
 ・  ・  ・  ・  ・


島田 僕はある時ばあちゃんに、

「うちって貧乏だけど、
 そのうち金持ちになったらいいね!」

 と言ってみたことがあるんです。
 するとばあちゃんはこう言うんです。 

「何言うとるの、貧乏には2通りある。
 暗い貧乏と明るい貧乏。

 うちは明るい貧乏だからよか。
 それも、最近貧乏になったのと違うから、
 自信を持ちなさい。
 うちは先祖代々貧乏だから。
 
 第一、金持ちは大変と。
 いいものを食べたり、旅行に行ったり、忙しい。
 それに、いい服着て歩くから、
 こける時も気ぃつけてこけないとダメだし。

 その点、貧乏で最初から汚い服着てたら、
 雨が降ろうが、地面に座ろうが、
 こけようが、何してもいい。
 ああ、貧乏でよかった」

 
記者 辛い貧乏生活も、
   知恵で明るく乗り切っていたのですね。


島田 本当は、絶対に辛かったと思いますよ。
   でも見せなかったね、暗いところは。

 やっぱり七人も小さい子どもがいる時に、
 自分が泣いたら子どもは終わっちゃうじゃないですか。
 だから絶対に泣くところは見せなかった。
 逆にケラケラ笑っていました。

 ご飯の時も、

「こんなに食べるものがない
 家庭も珍しかばい」

 って笑うんですよ。
 僕もよく分からなかったけれど、
 笑うしかないから一緒に笑っていました。
 アハハハッて(笑)。
 
 とにかく命懸けで育ててもらったものね。
 大きくなるにつれて、
 そういう苦労がだんだん分かってくるんです。
 いまになって気づくこともあるし。

「飯食わんか」って言われて、
「ばあちゃんは?」と聞くと、
「食べた食べた、もう腹いっぱいに
 なったから食べな」と。
 でも、炊事場にはばあちゃんの
 箸がないもんね。
 あぁ、ばあちゃん食ってないやって。
 

記者 孫に食べさせるために……。


島田 そういうばあちゃんを周りの
   たくさんの人が応援していました。

 7人もの子どもを育てた上に、
 60を越えても孫の僕を預かって
 苦労している大変な頑張り屋ということで、
 近所でも有名だったからね。
 
 例えば、豆腐屋さんが来ると
 ばあちゃんはいつも僕に、
 売り物にならない崩れた豆腐を
 半額の5円で買わせにやっていたんです。
 
 ところが、崩れた豆腐が一つもない日があってね。
 家に戻ろうとすると、
「あったよ!」って呼び止められたんです。
 振り向くと、豆腐屋さんが手で豆腐を
 つぶすところがちらっと見えた。


・  ・  ・  ・  ・  ・
 

島田 そんなばあちゃんの人生観の中でも、
   僕がとりわけ影響を受けたのは、
   人を羨ましく思わない、という姿勢です。

 見えを張らないということ。
 これができたら人生どんなに楽か。
 

記者 人を羨ましがらず、見えを張らない。


島田 はい。自分の分を過ぎたことを求めるから、
   余計な悩みを抱え込むんです。

 うちはこれでええねん、
 と言ったらそれでええんです。
 
 50代のおっさんが一流企業を
 リストラになったら、
 コンビニでバイトでもすりゃいいんですよ。
 そのほうが人間大きく見えるって。

 それをやりながら本当に
 やりたい仕事を探したらいいんです。
 家でふさいでおっても一文にもならんのだし。
 

 僕みたいに芸能界にいると、
 どうしても浮き沈みというのがあります。
 でも僕は全然平気。

 だって売れてチヤホヤされている
 時だけが人生とは思わんしね。
 
 仕事がなくてバイトしてもいいんですよ。
 そうやって自分のやるべきことを
 ちゃんとやっていたら、
 きっとまたチャンスがやってくる。
 僕はそう信じているから。
 ばあちゃんも言っていました。


「人間は死ぬまで夢を持て! 
 その夢が叶わなくても、
 しょせん夢だから」 
 って。


記者 あぁ、死ぬまで夢を持てと。


島田 僕がばあちゃんとの暮らしの中で
   一番学んだのは、楽しく生きる
   すべじゃないかと思います。

 いまの人は、楽しく生きるって
 案外難しいもんだと感じているんじゃ
 ないでしょうか。

 でも、人のことを羨ましがったり、
 見えを張ったりせず、自分の夢に
 向かってやるべきことを
 しっかりやっていたら、誰もが明るく、
 楽しく過ごせるんじゃないかな。



致知より





押忍!

0 件のコメント:

コメントを投稿