プロフィール

2016年10月22日土曜日

生きる意味、「それは魂(光)の成長のため」、そして「自分にあった全体(ふるさと)に帰るため」 石黒康之

 生後1か月で最重度の脳障碍児となった
 溝呂木梨穂(みぞろぎりほ)さん。

 体の自由を奪われたばかりか、
 言葉を発することさえできない
 梨穂さんでしたが、
 娘にも必ず言葉があると信じ続けたのが
 母・眞理さんでした。

 梨穂さんが、自身の言葉で綴った詩集
『らりるれろのまほう』を刊行するまでの
 歩みに、思わず涙が溢れます。

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 みぞろぎりほ──。

 言いたい気持ちがあります。
 びっくりして夢のようです。
 長い間、待ち望んでいました。

 私に言葉があると、
 なぜわかったのですか?
 ご覧の通り、何もできない私ですが、
 ぼんやりと生きてきたわけでは
 ありません。

 ずっと、私は
 人間とは何なのかということを、
 考えてきましたから、
 別に世の中の人が何と言おうと、
 私は私らしく生きてきました。


 * * *


忘れもしない平成24年5月20日。

この日、19歳5か月の
長女・梨穂が言葉を持っていることを
確認することができたのです。

生まれてすぐに脳に酸素が
届かないという原因不明の
トラブルに見舞われた梨穂。

それによって体の自由はおろか
言葉を話すことさえ
奪われてしまった梨穂は、
生後僅か一か月にして最重度の
脳障碍児となってしまったのです。


それでも私には、梨穂の中に
ちゃんと意思や思いがあることを
ひしひしと感じてきました。

梨穂にはきっと言葉がある。

だから何としてもその言葉を
引き出してあげたい──
その一心でした。

それだけに長年抱いていた思いが
叶った瞬間、鳥肌とともに
えもいわれぬ喜びが
体の中を駆け巡りました。

しかも驚いたことに、
梨穂の中には実に豊かな
言葉の世界が広がっていたのです。


梨穂の言葉を引き出してくれたのは、
國學院大学教授の柴田保之先生でした。

柴田先生はこれまで
「言葉を持たない」と思われてきた
重度障碍者から
言葉を引き出してこられた方です。

独自に開発されたスイッチを通じて、
パソコン画面に次々と
打ち出されていく梨穂の言葉。

人によって最初はなかなか
スムーズに言葉が出てこない方も
いらっしゃるようですが、
梨穂の中からはまるで溢れ出るように
言葉が生み出されていったのです。


 * * *(梨穂さんの言葉)


 自分にとって理想は、
 良き理解者を見出して、
 どうして私たちが生きる意味が
 あるのかということを伝える、
 そのことが夢でした。

 少し考え過ぎると
 思われるかもしれませんが、
 私にとっては私が生まれた
 意味がわからないと、
 私をなかなか保つことさえ
 難しいからです。

 理想をそのまま語ると、
 私にとって私の生きる意味は、
 私たちのような存在でも
 生きる意味があるのだから、
 どんな人にも生きる意味がある
 ということです。

 楽な人生ならそんなことは
 考えはしなかったでしょうね。

 でも、こうして私は、ぼんやりとは
 生きてこられなかったので、
 わざわざそういうことを
 考えてきました。


 なぜ、私に生きる意味があるのか
 というと、

 黙ったままの人生でも
 人は希望をもって生きられる
 ということを証明できたから

 です。


 なかなか信じられないかも
 しれませんが、私は
 希望をなくしたことはありません。

 小さいころからずっとお母さんに、
 たくさん愛情を
 注いでもらいましたから、
 私はとても幸せです。




 ……19年にわたる長い歳月を、
   親子は、そして家族は
   どのようにして乗り越えて
   こられたのでしょうか。

 そして、いかにして
 梨穂さんの中で言葉が育まれ、
 詩集を出版するまでに
 なっていったのでしょうか。



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押忍!

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