●致知出版社の人間力メルマガ よりシェアさせていただきました。 ───────────────────
松下電器産業(現・パナソニック)を 一代で世界的企業に育て上げた松下幸之助。 その偉業を成し遂げた一つの要因に、 松下幸之助が叱って人を育てる「叱り上手」だったことが挙げられます。
松下幸之助の人生、仕事を発展させる叱り方の極意を 日本型経営の研究の第一人者である加護野忠男さんに 語っていただきました。
…………………………………………………
〈加護野〉
松下流の人材育成の方法は、 ナショナルショップ店などの後継者を教育する 「松下幸之助商学院」という学校に行くとよく分かります。 この学校の教育方針の1つが「凡事徹底」です。
これは整理・整頓・清潔・清掃・躾の「5S」に始まり、 道を歩く時はポケットに手を入れない、 靴を脱いだら真っ直ぐ揃えるといった、 日頃の身の回りのことをきちんと行う習慣を身につけさせることで、 人を育てていくという考え方です。
また、この習慣づけは、 経営を成り立たせる上で何よりも大切な精神、 正直さ、真面目さ、愚直さといった精神を涵養することにも繋がってきます。
京セラの第二代社長を務めた伊藤謙介さんも 平凡なことを徹底させることの大切さを説いています。 伊藤さんは工場に行くとまずトイレのスリッパを見るといいます。
スリッパが綺麗に並んでいるなら問題ないが、 乱れ始めたら何か問題がある。スリッパを揃えることもできない、 心の余裕がない状態ではもっと大事なことができていない可能性があると言うのです。
そして、もう一つの教育方針が「覿面(てきめん)注意」です。 これは凡事ができていない人に、すぐその場で厳しく注意をする、叱る。
実際、幸之助さんはかなり厳しく人を叱っていました。 松下電器に入社し、その後三洋電機の設立に参画して 同社の副社長まで務めた後藤清一氏は、 幸之助さんに叱られた時の体験を『叱り叱られの記』で次のように記しています。
「すぐ来いッ。晩の10時ごろ。親類の人となにやら話をしておられたが、 私の姿を見るなり、人前もかまわず、こてんぱんに怒鳴られる。 見かねて親類の人もとめに入るが、それでやめるお人ではない。 部屋の真ん中でストーブが赤々と燃えている。 火カキ棒で、そのストーブをバンバン叩きながら、説教される。
ガンガン叩くので、その火カキ棒がひん曲がる。 フト、それに気づいた大将は、ぬっとつき出す。 〝これを真っすぐにしてから帰れッ〟あたるべからずの勢い。 ついに私は貧血を起こして倒れてしまった」
すさまじい叱り方ですが、 幸之助さんは特に優秀な人には大きなことではなく 小さなことで叱ったといいます。
幸之助さん自身、 「小事にとらわれて大事を忘れてはならないが、 小さな失敗は厳しく叱り大きな失敗に対しては むしろこれを発展の糧として研究していくということも、 一面では必要ではないかと思う」という言葉を残しておられますが、 これは「小事は大事」という考えに基づいています。 幸之助さんが小さなことを叱った理由は2つあると思います。
一つは合理的な判断への戒めです。 よい大学を出た頭のよい人というのは合理的に物事を考えがちですが、 得てして本筋だけ外さなければよいと、 小さなことを無視してしまいがちです。 幸之助さんは、小事が積もり積もることによって 組織は弱体化していくことに気づいておられたのでしょう。
第二には、小さなことを軽視するような状態は……
☆本記事は『致知』2016年12月号 特集「人を育てる」より |
|
|
|
0 件のコメント:
コメントを投稿