【規模を追わず、偉大さを追求する企業】
石塚しのぶ氏の心に響く言葉より…
2016年2月、米ビジネス誌『フォーブス』は、その100年の歴史の中で初めて「ベスト・スモール・カンパニーズ・イン・アメリカ(アメリカで最も優れた中小企業たち)」というランキング・リストを発表しました。
そのリストに掲載された25社は「スモール・ジャイアンツ=小さな巨人」と呼ばれ、「大きくなる」ことではなく、「偉大な企業になる」ことを選んだ会社として紹介されています。
「大きくなる」の意味するところは、売上げや利益といった「規模」だとわかりますが、「偉大な企業」がそれと違うというのはどういうことでしょう。
実は、スモール・ジャイアンツ企業の特徴は、売上げや利益の拡大を目指すのではなく、「従業員が生き生きと働ける最高の職場づくり」や、「お客様を喜ばせる優れた商品やサービスの提供」「地域社会とともに歩む姿勢」「他にはない唯一の企業文化の育成」などを最優先に実現すべきこととして、全力を傾けていることです。
そしてそれが、結果的には売上や利益のみならず、業界や市場の標準をはるかに超える目覚ましい成長を生むという、大いなるパラドックスを生んでいるのです。
なぜ今、「規模を追わず、偉大さを追求する企業に強みがある」のでしょうか?
それは、「お客様のロイヤルティ(忠誠心)」にとって、価格より何より、「信頼できる会社か」「応援したくなるような会社か」ということが、今までにも増して重要になってきているからです。
もちろん、価格や品質も大切ですが、生活者が企業を「選ぶ」ときに、価格や品質という機能価値は最低限の条件にすぎず、市場にごまんとある選択肢の中から選んでもらうためには、お客様が「嬉しい」「楽しい」と感じるような「感情価値」を提供することが必要になってきたということです。
アメリカでは、サブプライム問題をきっかけに、特に大企業への信頼は失墜してしまい、多くの生活者が「嘘をつかず、搾取をしない会社」「理想の社会を、一緒に創っていけるような会社」との心のつながりを渇望しています。
そうした生活者の思いに応えるように、近年、「小さいながらも」というよりは、その「小ささ」をむしろ味方につけて、大企業にひけを取らない存在感を発揮している中小企業たちが注目を集めているのです。
歴史的には、「資本主義の道具」となることをモットーにして大企業の動向を追ってきたフォーブスが、こうした先進的な中小企業のムーブメントに着目して、「ベスト・スモール・カンパニーズ・イン・アメリカ」という年間ランキングを発表したのも、時代のトレンドを見事に反映しているといえるでしょう。
考えてみれば、その企業が1兆円企業であるとかいうことは、お客様の購買動機にあまり関係がありません。
規模が大きいからといってその会社から買おう、という気になるわけではありませんし、むしろ、「大企業への不信」が募ることの多い近年の風潮では、規模が「大きいこと」は、必ずしもプラスには働かないのです。
また、企業自体にとっても、規模の大きさが組織力の強さを意味するかというと、そうではありません。
組織力を測る有力な指標のひとつである「従業員エンゲージメント」を見ると、スモール・ジャイアンツでのエンゲージメント率は、アメリカの平均的企業の優に3倍にあたることがわかっています。
そしてこれは、企業の生産性にも直接、影響しています。
スモール・ジャイアンツは、リピート顧客率、お客様や従業員の満足度、従業員の離反率や欠勤率など、どの指標についても、一般の企業よりはるかに優れた結果を出しており、それが利益率の高さに反映されているのです。
数多くのスモール・ジャイアンツ企業を訪問したり、アメリカ全土のスモール・ジャイアンツが集う場に参加したりして、経営者たちに成功の秘訣を聞いてきました。
するとそこには、共通の考え方が存在することがわかりました。
そして、さまざまな事例から共通項を拾い出し、戦略的企業文化を育成するうえで、どんな企業にも導入可能なシンプルな方法論として体系化したのが、「コア・バリュー経営」です。
「コア・バリュー」とは、会社の「核となる価値観」という意味です。
「コア・バリュー経営」では、自分たちの会社が何のために存在しているのかという会社の存在意義(コア・パーパス)を明確にしたうえで、社内の全員が共有すべき「価値観(コア・バリュー)」を定め、価値観に基づいた考え方や行動を習慣化する「仕組み」をつくって、実践していきます。
コア・バリュー経営は、会社を長期的な繁栄に導く戦略的企業文化の育成プロセスを民主化して、一般の従業員や現場の手に委ねます。
コア・バリュー経営では、このプロセスを、「会社の皆で夢を語り、共有する」ところからスタートするのです。
『アメリカで小さいのに偉大だ!といわれる企業の、シンプルで強い戦略』PHP
「コア・バリュー」経営とは、上から下への「トップダウン」ではなく、その会社独自の「コア・バリュー」や「コア・パーパス」にそって、従業員やスタッフ自らが、自分の頭を使って考え、判断し、行動できるようになる経営だという。
たとえば、ニックス・ピザ・アンド・パブという客席数350席のピザ店のコア・パーパス(存在意義)は「ニックス独自の体験の提供…地域住民のみなさんに、家族や友人と集う場、まるで我が家のように居心地よく楽しめる忘れがたい体験の場を提供する」。
「コア・バリュー(核となる価値観)」は、「尊厳と尊重の念をもってみなに接する」「共に学び、教え、成長する」「仕事を楽しむ」など、全部で12項目からできているそうだ。(以上、同書より抜粋)
仕事を「やらされている」から、スタッフ自らが「やりたい」と思うような経営の仕組みをつくることが、コア・バリュー経営。
売上や規模や店舗数を拡大するという方向性と、内部を充実し、従業員や顧客の満足度を高めると方向性は大きく違う。
規模が拡大すればするほど、逆に、従業員や顧客の満足度は下がってしまうケースは多い。
先の見えない、変化の激しい現代…
盤石と思われていた大企業が、いとも簡単に市場から消え去る時代となった。
規模を追わず、偉大さを追求する企業には大いなる魅力がある。
Facebookよりシェアさせていただきました。
押忍! 石黒康之
0 件のコメント:
コメントを投稿