熊本県において、日本国内で最も多く
お産を手掛けている病院をご存じでしょうか?
年間のお産数は実に3,800名。妊産婦からも
絶大な信頼を受けているのが、福田病院です。
福田病院では、どのような工夫がなされているのか―。
理事長を務める福田さんに、医療にかける思いが様々な形で
結晶化した取り組みについてをお話しいただきました。
致知出版社の人間力メルマガ 2018.12.5
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福田 稠(福田病院理事長)
※『致知』2019年1月号【最新号】
※特集「国家百年の計」P52
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私は昭和48年に産科医になり、
最初は国立熊本病院に勤務していました。
その頃は、戦後にたくさんできた産婦人科の開業医が、
設備の老朽化などで医療の進歩についていけず、
だんだん立ち行かなくなっていました。
当院も老朽化が進んでおり、
自分が後を継いでから先のことがとても不安でした。
しかし、大病院を見ると、健康な妊婦さんたちも
大部屋に押し込まれて、病人と同じものを食べさせられている。
「患者はどうせたくさん食べないから二食でいい」
というところまであり、これでは妊婦さんは大変です。
がんのような難しい病気では大きな病院が安心ですが、
お産なら開業医も選ばれるチャンスは十分にあると思い、
私は病院の環境を徹底的によくしていくことにしたのです。
『聖書』に出てくる羊飼いが、
100匹の羊の群れから迷い出た一匹を救いに行ったように、
大病院の産科医療というのは、
重篤な患者の対応が中心になっています。
ですから当院では、残りの99匹を大事にするような
環境づくりに力を注いでいったのです。
もちろん1匹を救うことも重要です。
NICUの導入なども早くから手掛け、
医師や助産婦が難しい症例も含めて診療に専念する一方、
コックさんや旅客機のキャビンアテンダントのような
働きができる人材も集めて、普通の妊婦さんたちに快適に
過ごしていただくことにも力を注いでいきました。
最初に手掛けたのが病室の個室化で、
当時はお産後のシャワーなどもっての他と言われる中で、
バス、トイレも完備しました。病院内にレストランを
設けておいしい料理を提供したり、
美容室やエステなどの施設も導入しました。
(中略)
そのような取り組みを評価していただき、
福田病院で出産したいと、よその地域からも
妊婦さんが来院してくださるようになってきましたが、
辛いこともありました。それは少子化で限られた
シェアの中から患者さんを奪ってしまい、
同業の先生方の経営を圧迫してしまったことです。
また、先にも述べましたが、立ち会い出産を
始めた時には、随分批判を受けました。
例えば、ご主人に臍の緒を切ってもらうのは
医師法違反だと言うのです。自分の子供の臍の緒は
業として切るわけではなく、医師法違反ではないのですが、
なかなか理解を得られませんでした。
その時にも別の先生から、
新しいことを始めれば衝突も起こる。
けれども喧嘩だけはするなと諫められました。
それはキリスト教的に言えば、赦すということでしょう。
そのような温かい励ましをいただきながら、
今日までやってきました。
もちろん辛いこともありますが、出産の喜びというのは
我われが側で見ていて嫉妬するほど大きなものです。
そのような場を提供できる幸せというのは、
何ものにも替えがたいものがあります。
やはり妊婦さんたちの笑顔、それから職員の笑顔、
これがこの仕事を続けていく大きな原動力です。
【『致知』のキーワード】
・新しいことを始めれば衝突も起こる
・妊婦さんや職員の笑顔、
これがこの仕事を続けていく大きな原動力です
致知出版社様メルマガよりシェアさせていただきました。
押忍
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