プロフィール

2016年8月30日火曜日

マザー・テレサ

松下政経塾の塾頭として、
 経営の神様・松下幸之助氏の謦咳に接し、
 現在は自ら主宰する「青年塾」で
 日本の若者の育成に尽力する上甲晃氏。

 松下氏の教えを胸に
 多くの若者に向きあってこられたものの
  時に「あんな人はやめてほしい」と
 思うような人もいたといいます。

 そんな上甲氏の心を変えたのは、
 どのような言葉だったのでしょうか。

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 松下政経塾で14年間
 塾生を育ててきた中で、
 やる気のない人を
 教育するのも難しいが、
 自分に自信のある人を
 教育するのも難しいことを痛感しました。

 自分は偉いと思い込んでいる人は、
 素直に言うことを聞かない。

 松下政経塾には当初、エリートを
 自認して偉そうにしている塾生が
 たくさんいました。

 人の言うことを聞かず、
 理屈が多く、指導には
 大変苦労をしました。

 そんな私に大きな示唆を
 与えてくださったのが
 マザー・テレサでした。


 マザー・テレサの言葉に
 常々深い感銘を受けていた私は、
 この人に会いたいという思いを募らせ、
 ついに後先考えずにインドの
 カルカッタ(現・コルカタ)へ渡りました。

 彼女に直接、どうしても
 聞いてみたいことがあったからです。

 当時のカルカッタは人口1千万人のうち
 200万人が路上生活者で、
 至るところに生死も分からない
 行き倒れの人が転がっていました。

 全身から膿を出している人、
 ウジ虫の湧いている人、
 とても側に寄れたものではありません。

 しかしマザー・テレサと
 仲間のシスターたちは、
 一番死に近い人から
 順番に抱きかかえて、
 死を待つ人の家に連れて行き、
 体を綺麗に洗ってあげ、
 温かいスープを与えて見送るのです。

 せめて最期の瞬間くらいは
 人間らしくと願ってのことでした。


 運よく、カルカッタの礼拝堂で
 マザーに面会することのできた私は、
「どうしてあなた方は、あの汚い、
 怖い乞食を抱きかかえられるのですか?」
 と尋ねました。

 マザーは即座に、

「あの人たちは乞食ではありません」

 とおっしゃるので、私は驚いて

「えっ、あの人たちが
 乞食でなくていったい何ですか?」

 と聞くと、

「イエス・キリストです」

 とお答えになったのです。

 私の人生を変えるひと言でした。


 マザーはさらにこうおっしゃいました。


「イエス・キリストは、
 この仕事をしているあなたが本物かどうか、
 そしてこの仕事をしているあなたが
 本気かどうかを確かめるために、
 あなたの一番受け入れがたい姿で
 あなたの前に現れるのです」


 目から鱗が落ちる思いでした。

 マザーの言葉を伺った瞬間、
 私が松下政経塾で、あんな人は
 辞めてほしいと思っていた塾生が、
 実はイエス・キリストであったことに
 思い至ったのです。

 自分はこれまで、他人を変えようと
 するあまりどれほど人を
 責めてきたことだろうか。

 しかし、いくらそれを続けたところで
 人を変えることはできない。

 人生でただ一つ、
 自分の責任において変えられるのは
 自分しかない。

 常に問われているのは、
 自分から変わる勇気を持てるかどうかだ。

 このことに気づいた途端、
 心が晴れ晴れとしてきたのです。


☆☆☆.

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