プロフィール

2017年5月6日土曜日

仏様が作った手

「鈴木大拙が歩いた道」

上田閑照(京都大学名誉教授)
岡村美穂子(大谷大学元講師)

 『致知』2017年6月号より

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私、とにかく恐れを知らない
生意気盛りだったものですから、
初めて(鈴木大拙先生の)講演を
お聞きした後、先生が宿泊されていた
コロンビア大学の附属の
アパートのようなところに
お話をしに行くようになりました。

そして、日頃の不満や悩みを
素直に先生にぶつけたんです。

先生はソファーに寄りかかり
「なあ、なあ」と頷きながら、
嫌な顔一つせずに聞いてくださいました。

「あなたの態度は間違っている」などと
いうことは全くおっしゃらない。

そのうちに、


「美穂子さん、
 あなたの手を出してごらん」


と言われるんです。

出しますと、私の手を撫でながら


「綺麗な手じゃないか。
 よく見てごらん。仏の手だぞ」


と涙を浮かべていらっしゃるんですね。
しかし、私は自分の手が
どうして仏の手なのか、
答えが繋がりません。

それで翌日も出掛けていって
挨拶もしないまま


「先生、あれはどういう意味ですか」


と質問したんです(笑)。


(すると先生は逆に)


「あなたは自分の手だと思っているが、
 あなたがつくったのか」


と質問されました。


「そうではありません」


と答えると


「あなたの親がつくったのか。
 親の親がつくったのか」


と矢継ぎ早に投げ掛けられる。
そして最後には、無言のまま
ご自身の手を空中で
自由に躍らせられるんです。

言葉には限界があることを
知っていらっしゃって、
理屈を超えた世界があることを
このような形で教えてくださったんです。


致知出版社様メルマガよりシェアさせていただきました。


押忍!

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