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2016年2月3日水曜日

「断」の訓練はできているか


【訳】

秋の風が黄色い葉を払い、
霜が青い草を萎えさせることもある。

太陽が南を過ぎてしまうと暖かさが
弱まっていく。
自然の動きを見てもある程度、
断、つまり区切りをもって動いていく。
武の精神にも断、何かを断ち切って
いくことが必要なのだ。


【書き下し文】

風黄を払い、霜蒼きを萎ます有り。
日南して暖無し。
仰いで造化を観るに断有り。
吾武の中に在るを知る。



【解説】

動きというものには常に「断」
つまり「区切り」が必要です。

わかりやすい例を挙げれば、
恋愛においても断が非常に大事で、
断がないと次に進めない。

あの人はまだ私が好きかも、などと
未練を抱いているとなかなか次の行動への
決断ができない。

「断つ」という日本語はとても強い言葉で、
「断ち切る」と言うし、刀のことを「太刀」
とも言い、「立つ」という言葉にも
通じます。

武士はこの「断つ」ということをしっかりと
練習していたのでしょう。
じっくりと構えて最終決断する。
決断したらもう後には戻れないのです。

例えば幕末の西郷隆盛が幕府につくか
長州と手を組むかの決断を迫られました。

わずか二年前の禁門の変では
長州と薩摩は戦っていました。
普通だったら薩摩は
そのまま幕府につくところです。

しかし、西郷隆盛はじっと考え、
最終的に長州と組むという断を下しました。

これこそ幕末最大の決断と言っても
いいでしょう。
これによって日本は大きく
動き出したのです。

口先だけでぺらぺら話しているだけでは
現実は動きません。
決断が物事を動かしていくのです。

会社でも常に決断が必要です。
企画も営業も、どこと手を結ぶか、
どこに何を売り込みに行くか、
すべて決断です。

人事もまた常に決断です。
一度採用したら、三十年四十年と
仲間として仕事をしていくのです。

いろんな思いを断ちながら
クリアに断を下す。

そういった区切りの訓練、決断の訓練が
しっかりとできているか。
時にはそういう目で自分自身を
振り返ってみることが大切です。

「断」がしっかりとできれば、
それは「武」の精神を持っていると
言ってもいいでしょう。



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 齋藤孝・著 致知出版社




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