空手道一筋に歩んでこられた森俊博さん。
若くして頂点に立った森さんを支えたもの、
それが古典の言葉でした。
致知出版社の人間力メルマガ 2017.12.6
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森 俊博(日本空手協会国際理事/師範)
※『致知』2018年1月号【最新号】
※連載「致知随想」P90
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稽古でコテンパンにやられるからには、当然、
大会に出ても協会の先輩と当たれば負けてしまう。
どうすれば自分は勝てるのか──。
稽古こそ休まなかったものの、悩みに悩んだ苦しい日々が続いた。
そんな中ふと気づいたのは、稽古に対する自分の甘さだった。
稽古が厳しいゆえに、
最後までやり切れるよう力の出し方を調整していたのだ。
時を同じくして、中国北宋時代の学者・司馬温公と
門人・劉安世との問答を知ったのはまさに天佑であった。
「人間が一生涯守るべき言葉があるなら教えてもらいたい」
と問う門人に対して、司馬温公は
「それは誠である。誠の一字こそは、
終生守っても、一つも間違いない」と答えた。
誠に至る方法を劉安世が重ねて問うと、
師は「妄語(もうご)せざるより始まる」、
つまり嘘をつくなと教えている。
空手の世界において嘘をつかないとはどういうことか。
自ら導き出した答えは、自分の持っている力を出し切って、
技と自分とが一体になることだった。
そのためには稽古の仕方をガラッと変え、
最初からぶっ倒れる覚悟で稽古に臨むしかないと思い至る。
その日を境に以前とは全く異なる辛い日々が続いた。
自分の納得がいく稽古ができるか。すべてはその一点にかかっていた。
他人との勝負ではなく、自分との闘いだった。
自分の限界に挑戦する稽古を続ける中、
半年も経たないうちに体に変化が出てきた。
全身の筋肉が鍛えられ、スピードと力が身についていたのだ。
昭和50年に行われた第4回全日本空手道選手権大会において、
並み居る先輩方を降して初優勝できたのも、厳しい稽古の賜物であろう。
特に決勝戦では、ふとした瞬間に
まばゆい光に包み込まれるという、不思議な体験もした。
相手のゆっくりとした動きに対して自然と体が反応し、
観客の歓声で我に返った時には既に私に軍配が上がっていたのだ。
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押忍!
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