心に「武」を秘めているか
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原文
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我が武なるものは天地の初めに在り、
しかして一気に天地を両つ。
雛の卵を割るがごとし。
故に我が道は万物の根元、百家の権與なり。
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現代語訳
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私たち日本人の「武」というものは
天地の初めからあるものである。
その「武」の力によって天と地が分かれたのだ。
それはまるで雛が卵の殻を割るように
自然なことであった。
私たち日本人の「武」の道はすべての根元であり、
いろいろな考え方の大本になるものである。
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解説
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「武」という言葉は「矛」を「止める」という字から
なっています。
つまり「矛を収める」という意味も
含んでいるのです。
武によってすべてをやっつけてしまっては
何もなくなってしまいます。
武の力で混沌としたものに
秩序を与えていくことが大事なことなのです。
『古事記』の冒頭の部分の
「天地初発之時」でも、
世界の最初は混沌としているが、
やがて天と地が分かれて秩序が生まれてくると
書かれています。
『古事記』に限らず多くの神話に共通するのですが、
最初はカオス、混沌としている。
そこに何かの力が加わって秩序が生まれる。
秩序がないと文明が生まれても、発達しません。
その秩序を生み出すのが「武」の力です。
ですから「武」は破壊するだけでなく、
それによって何かを生み出す、平和も保つ、
ということです。
例えば、新しい担任として小学校の教室に行く。
そこはだいたいカオスです。
教室に初めから秩序があるわけではありません。
そこで先生は初日に、威厳のある話し方で
「このクラスのルールはこれこれです。
ルールを守ることで自由もあります。
皆さんもきちんと守るようにしてください」
といったことをきちんと話す。
これによって子どもたちが落ち着き、
教室にも秩序が生まれるのです。
これは仕事でもまったく同じだと思います。
新しい課長が来た、優しいけれど
どこか優柔不断ではっきりしない。
すると部下がなめてしまって、雰囲気がだれてくる。
ところが、新しい上司がどこか
「武」の気持ちを持っていると
感じさせたらどうでしょう。
ここでいう「武」とは腕力ではありません。
当たりは柔らかくても、
どこか強いものを持っている、
根本的な部分では厳格で、
いざという時はきちんと対応してくれる。
そんな「武」を秘めている上司であれば
部下からリスペクトされるでしょうし、
部署の雰囲気も変わってくるでしょう。
今のリーダーシップ論はチームワークが大事で、
昔のようなカリスマ的なリーダーではなく、
チームをまとめていく人が必要だと言われます。
これは確かに時代の流れかもしれませんが、
やはりどこかに戦う気持ちがなければいけません。
戦う気持ちがなければ、
チームはどこに進めばいいのかわからなくなる。
あるいは士気や秩序を保つことができない。
力も分散してしまいます。
日本は平和な国ではありますが、
『古事記』に書かれているように、
最初は「武」の力で秩序がもたらされたという、
古代の神話を踏まえての
「武」の捉え方がまず書かれているのです。
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