●稲盛
(略)顔を見ただけで、また少し話をしただけで、
邪な印象を受け、いくら好条件でも、
商談を進めることを思い止まることがあります。
私は、そのようなことも、人間が自分の思いを
発信しているからだと思うのです。
だから、同じ思いを発している人と引き合ったり、
また異なる思いを発している人と
反発したりするのだと思うのです。
●五木
そういう感覚は非常に大事なことだと僕は思います。
たまたまここへ来る前にプラトンの『饗宴』を
拾い読みしていたら、「ハーモニー」という
言葉が出ていました。
音には合う音と合わない音があって、
合う音が共鳴し合うことによって、
もう一つの新しい音が生まれてくる。
そういうことが人間対人間、
あるいは思想対思想の中にもあって、
その波長、リズムが共鳴するような、
波動の音階があるのではないかと思うのです。
そういうことは、理論で納得するより
感じることだと僕は思うんですね。
古来、宇宙との合一とか、自然法爾、
すなわち、自分が宇宙万物の一部として生み出され、
生かされていることを実感して、
そのことに感謝する、というようなことが
いろいろと言われてきましたが、
そういうことは、理論でずっとたどっていって
納得するのではなく、普段から自分も
自然に感じていた、というようなことって
ありますよね。
●稲盛
ありますね。
●五木
僕は、そういう実感を、いまはもっと
大事にしなければいけないと思っているんです。
いまは情報があまりに氾濫しているために、
自分の実感を情報によって
修正していくことがしばしばあります。
こんな偉い人がこう言っているし、
こんな情報もあるから、自分の思っていたことは
間違っているかもしれないと。
しかし結局後から、やはり最初に
直感的に感じたことのほうが正しかった、
というようなことがしばしばあります。
情報化の時代だなんていわれますが、
いまいわれているのは情報ではないと
僕は思うんですよ。
情報というのは「情を報ずること」だと思うんですね。
情というのは人間の感情とか感覚に当たるものです。
ですから、数字とか統計とかデータというのは、
むしろ情報の下位に属するもので、
本当の情報というのは、人間の心の中の感情を
きちっと把握してそれを伝えることだと思うんです。
『生き方入門』目次
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