野口悠紀雄氏の心に響く言葉より…
いま、世界のビジネスモデルは大転換しようとしている。
これに伴って、組織のあり方や人々の働き方も大きく変わる。
そうした変化を先導できる国や企業や個人が発展し、変化に対応できない国、企業、個人が遅れを取り、衰退する。
大航海時代から産業革命を経て、現在にいたる長い歴史の流れをみる。
いまどき「大航海時代を振り返る」などと言うと、「なんたる時代錯誤」と思われるかもしれない。
確かに、これは500年も前のことだ。
しかし、世界は、その時と同じような大変化を迎えようとしている。
それは、一言でいえば、産業革命以前の独立自営業の世界への「先祖がえり」だ。
産業革命以降続いてきた流れが、いま大きく転換しようとしているのである。
産業革命以降のビジネスモデルの基本は、さまざまな工程を1つの企業の中に統合し、組織を大規模化することによって、効率化を図ろうとするものだった。
しかし、1990年代以降、新興国の工業化や情報・通信技術の進歩によって、この基本が変わりつつある。
新しい経済において重要なのは、大組織の中で決まりきったことを効率的に実行することではなく、まったく新しいビジネスのフロンティアを見出すことだ。
それに成功するかどうかが、これからの企業や個人のあり方に大きな影響を与える。
「産業革命によって垂直統合化・集権化・組織化が進展したが、新しい経済の最先端は、それ以前の時代の分権的ビジネスモデルへと先祖がえりしつつある」ということになる。
ただし、「大組織か、小組織か」ということについての先祖がえりは、まだ現実には生じていない。
現在の社会において大組織がいまだに支配的であることは、否定できない。
だが、経済活動の中心が産業革命前のような小組織や個人に移る萌芽(ほうが)はすでに見られる。
人々の働き方においても、フリーランサーが増えつつある。
『「産業革命以前」の未来へ』NHK出版新書
野口氏は本書の中でこう語る。
『アメリカでは、組織を離れて働く「フリーランサー」が増えている。
情報技術が進歩した結果、仕事の進め方に関する自由度が高まり、1ヶ所に集まって仕事をする必要性が薄れたからだ。
高度の専門家について、とくにこのことが言える。
こうした仕事を斡旋(あっせん)するためのスマートフォンアプリもある。
これまでフリーランスと言えば、農業や小売業などが主だった。
最近の特徴は、それが高度な専門家に及んでいることだ。
アメリカにおけるフリーランサーの数は、5730万人だ。
これは、アメリカの労働人口の35.8%になる。
このレポートは、2027年には、フリーランサーが8650万人で、50.9%と過半を占めるだろうと予測している。
ダニエル・ピンクは「フリーエージェント社会の到来…"雇われない生き方"は何を変えるか(ダイヤモンド社)」において、人々は、組織から離れ、独立自営業になり、肉屋と燭台(しょくだい)職人の時代になるだろうとした。
これは、まさに、工場制工業出現以前の社会だ。
それが現実のものになろうとしているのである』
現在、働き方改革が声高に叫ばれている。
今後、色々な改革が進むが、その中でフリーランスのことはあまり多く語られていない。
しかし、これからの時代はフリーランスという働き方が、様々な職業で出現してくるはずだ。
「ビジネスモデルの大転換が始まる」
頭を柔らかくして、様々な働き方を模索してみたい。
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