早くから脳科学に基づく深い洞察によって、
人間の基本的な性格は幼児期につくられると考えた
平澤先生は、晩年に近づくにつれて幼児教育の意義や、
母親の役割の重要性を痛感されていました。
そのため、「全日本家庭教育研究会」の創設に尽力し、
1973年の発足時には初代総裁に就任されたのです。
大変ありがたいことに、私は5代目総裁に
任じていただきましたが、平澤先生は教育者としての余生を、
全家研運動に捧げるほどの意気込みをお持ちでした。
「母よ 尊い母よ 日本の子らに美しくたくましい魂を
世界の子らに誇らしく清らかな心を 偉大な母よ」
これは平澤先生がよく揮毫された言葉だそうですが、
教育における本質的な役割に「母」の存在を
謳い上げること自体、当時は非常に稀なことでした。
医学者として、教育について真剣に教え続けてきた
平澤先生にとって、この呼び掛けは祈りに近いものだったのです。
また、平澤先生はできる限り遠方まで出向いては講演を行い、
全国の母親たちと膝を交えて語り合う親しさも示されました。
その際、最も力説されていたのが、
「人間には無限の可能性がある」です。
「人間には約140億個の脳神経細胞があるが、
それを全部使い切った者は一人もいない」ことを強調。
決して子供に「おまえはダメだ」などと言ってはならない、
誰もが大きな可能性を持った「尊いよい子」なのだと語り、
世の母親たちに勇気を与えて歩いたのです。
さらに平澤先生は自らの教育に関する信条を、
実に平易な言葉で五つに集約しました。
一、親は、まず、暮らしを誠実に
二、子供には楽しい勉強を
三、勉強は、よい習慣づくり
四、習慣づくりは、人づくり
五、人づくりは、人生づくり
ここにはただ功利的に子供の成績向上を期待するのではなく、
何よりもまず親自身が誠実に日常生活と
向き合うことが大事であると説かれています。
「結局、約140億の脳神経細胞を活動させる。
これをひと口で言えば努力以外にないのであります。
その子供ができなければできないままで、
やる気に火をつけることができるかどうかだと思います。
だからビリで学校を出ても伸びる人は伸びる」と語り、
子供のやる気を起こさせることこそ真の教育であると語った平澤先生。
やる気になる対象は何でも構いません。
火の玉のように努力する道を与えることさえできれば、
学校の成績に一喜一憂することはないと
平澤先生は言い続けたのです。私もそのとおりだと思いました。
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「情熱とは燃えるこころの力である」と説く
平澤興さん。その半生が、村上和雄さんの
話から浮かび上がってきます。
致知出版社の人間力メルマガ 2018.7.27
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1 村上和雄氏が語る、我がこころの師
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村上 和雄(筑波大学名誉教授)
※『致知』2018年8月号
※連載「生命科学研究者からのメッセージ」P112
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シェアさせていただきました。
押忍!
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