気の遠くなるほど長い間、経営の現場で
冷や汗と脂汗を流しながら働いてきた結果、
分かったことがある。
伸びる企業、成長する企業と、
ダメな会社、倒産する企業を分ける
最大の原因は、「社長の品質」に尽きる、
という一点である。
社長の品質の高い企業は長寿企業となり、
低い企業は短命企業で終わるということだ。
良かれ悪しかれ企業の運命は、
どんなに控えめに言っても
社長一人の品質で80%以上は決まってしまう、
という「発見」である。
高品質の社長とは如何なる人か?
ザックリ言うと、"才と徳" の人である。
経営能力に長けていて、
仕事を上手に切り回すことができる
"才" はもとより必須条件だが、
加えて人格、人徳、人間性に秀でていて
人から信頼され尊敬されるという
〝徳" を兼ね備えた人である。
「人は勘定と感情で動く」という俚諺がある。
"あの人の下で働いていると勉強になる"
"実力がつく"し、"昇進もして月給も上がるだろう"
という勘定が成立すると、
部下はとりあえず付いてくる。
一方、"あの人は人間として信頼できるし、
その上尊敬もできる、あの人といっしょに
仕事をしていると自分のヤル気が高まる"
という感情を持った部下は
心から納得して後に付いてくる。
勘定は才でまかなえるが、
感情は徳のなせる業である。
社長にとって、才と徳の相対的重要性は、
才の1に対して徳は4である。
才という仕事力よりも、
徳という人間力のほうが4倍も重要だと
いうことである。
自分に才が足りない場合は、
才に優れた部下を用いて補えばいい。
才は補完が可能である。
徳は本人固有の資質であり、
代替不可能である。
大なり小なり一国一城の主たる社長に
求められる徳とは、換言すれば人間力である。
社員は、一定の才もあるが、徳に秀でた、
人間力の高い社長に魅せられた結果、
〝あの人のためなら"〝あの人が言うなら"
という感情を抱くようになる。
人間力を因数分解すると、
そこには、LEADERSHIP(リーダーシップ)
というキーワードが浮かび上がってくる。
各文字はそれぞれ2つの意味を持っている。
L=LEADERSHIP(リーダーシップ)
LIBERAL ARTS(教養)
E=EDUCATlON(教育・人財育成)
EXPLANATION(説明能力)
A=AMBITION(志・野心)
ACTION(行動力)
D=DELEGATION(権限委譲)
DECISION(決断力)
E=ETHICS(倫理観)
ENTREPRENEURSHIP(起業家精神)
R=RESPONSIBILITY(自責)
RESPECT(尊敬)
S=SELF-DEVELOPMENT(白己啓発)
SELF-SACRIFICE(自己犠牲)
H=HUMAN POWER(人間力)
HEALTH(健康)
I=INTEGRITY(高潔)
INNOVATION(改革)
P=PASSION(情熱)
POPULARITY(人望)
キーワードの頭文字は見事(?)に
LEADERSHIPとなっている。
至極真面目な言葉遊びである。
一般的な法則に当てはめて物事を考える方法を
演繹法と呼ぶ。
逆に、経験から共通要素を見いだして
ひとつの法則を導き出すアプローチを
帰納法という。
LEADERSHIPという言葉で説いた私の人間力論は、
50年以上のビジネス経験の中から導き出した
帰納法の所産である。
厳密に言うと帰納と演繹の摺り合わせの産物である。
「人間力」などという、我ながらおこがましいと
認めざるを得ない、大それた命題に
私があえて取り組んだ際の最大の師は3つある。
長い間のいくつもの失敗を含んだ経験と、
その間に謦咳に接した数多くの優れた経営者の方々及び、
心の師と仰ぐ座右の書である。
「いつの時代でも、仕事にも人生にも
真剣に取り組んでいる人はいる。
そういう人たちの心の糧になる雑誌を創ろう」。
これは、経営者やリーダーに
ひたすら「人間力」を説く、
日本唯一の人間学の雑誌『致知』の創刊理念である。
本書が、経営や人生に真剣に取り組んでいる
あなたにとって、少しでもお役に立てば
望外の喜びである。
一読(できれば二読、再読)の上、
なるほど!と納得のいく点があったら、
是非実行に移していただきたい。
まず参考に、それから実行に、更には続行に、
の3コウをお勧めしたい。
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目 次
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第1章 リーダーシップ・教養
第2章 教育と人財育成・説明能力
第3章 志・行動力
第4章 権限委譲・決断力
第5章 倫理観・企業家精神
第6章 自責・尊敬
第7章 自己啓発・自己犠牲
第8章 人間力・健康
第9章 改革・高潔
第10章 情熱・人望
・リーダーにカリスマ性はいらない
・説得力の決め手は人間力
・夢を実現する方程式
・中小企業が伸び悩む理由
・人間力とは信頼と尊敬の合計値である
・一流の人は顔で人を導く
・人望は権力や権威からは生まれない
・社長はデキルデキタ人であれ
・サラリーマンとビジネスマンの違い
・チャレンジする勇気をチームに鼓舞せよ
・一日4回メシを食う
・人生は、取り返しはできないがやり直しはできる
・説得力の決め手は人間力
・優れたリーダーは優れたコミュニケーターである
・行動は成功を約束しないが行動しなければ成功はない
・信用は信頼を得るためのステップ
・人間力を高める修羅場のすすめ
・正しい任せ方を知っておこう
・決め方の作法
・リスクをとって決める覚悟と勇気
・最大のリスクとはリスクを取らないことである
・生き続けるとは変わり続けること
・馬車を10台つないでも列車にはならない
・イノベーションが産業を生む
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略 歴
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新将命(あたらし・まさみ)
1936年東京生まれ。早稲田大学卒。株式会社国際ビジネスブレイン代表取締役社長。
シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップなど、グローバル・エクセレント・カンパニー6社で社長職を3社、副社長職を1社経験。2003年から2011年3月まで住友商事株式会社のアドバイザリー・ボード・メンバーを務める。「経営のプロフェッショナル」として50年以上にわたり、日本、ヨーロッパ、アメリカの企業の第一線に携わり、今も尚、様々な会社のアドバイザーや経営者のメンターを務めながら長年の経験と実績をベースに、講演や企業研修、執筆活動を通じて国内外で「リーダー人財育成」の使命に取り組んでいる。著書に『経営の教科書』『リーダーの教科書』『王道経営』(いずれもダイヤモンド社)『最強のリーダー力』(日本文芸社)『信じる力』(東洋経済新報社)などがある。
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徳のある社長になるのための方程式
『新将命の社長の教科書』
新将命・著
致知出版社様メルマガよりシェアさせていただきました。
押忍!
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