【時代の空気とは】
為末大氏の心に響く言葉より…
社会の中で生きていると、かならず「限界」というものにぶつかるときがきます。
スポーツの世界にも、限界ととらえられていたことがありました。
「1マイル4分の壁」です。
長い間、1マイル(約1609メートル)を4分未満で走ることは、人間には不可能と考えられていました。
何十年にもわたって、アスリートたちがその限界の壁にぶつかり、医師は「無謀な挑戦は命を落とす」と警告し、エヴェレスト登頂や南極点到達よりも難攻不落といわれていました。
けれど、1950年代、ロジャー・バニスターというイギリス出身の陸上競技選手が登場し、世界の常識を書き換えます。
オックスフォード大学医学部の学生であったバニスターは、トレーニングに科学的手法を持ち込んで、1マイルを3分59秒4で走り、見事に4分の壁を破りました。
興味深いのは、そのあとです。
バニスターが1マイル4分を切ってから、1年のうちに、23人もの選手が1マイル4分の壁を破ったのです。
これまで人類の限界ととらえられていた、1マイル4分とは、決して肉体的な限界ではありませんでした。
1度、成功者を見たことで、この壁は破れないという思い込みが解除されたのでしょう。
バニスターによって、限界が取り払われたのです。
周囲の常識が限界をつくる例をもうひとつ見てみましょう。
元メジャーリーガーの野茂英雄さんです。
野茂さんがメジャーリーグへの挑戦を表明したとき、国内の野球関係者はこう考えていました。
「野茂の実力だと、アメリカでは通用しないだろう」
ですが、それも周囲の思い込みにすぎません。
松井秀喜さんが「野茂さんがいなければ、ほとんどの選手はアメリカに行けなかった」と断言しているように、野茂さんの活躍によって、日本人はメジャーリーグで通用しないという思い込みが外れ、今では多くの日本人が海を渡っています。
「努力を重ねても望む結果が得られない経験が続くと、人は『何をしても無意味だ』と思うようになり努力をしなくなる」
これを「学習性無力感」といいます。
アメリカの心理学者、マーティン・セリグマンが解き明かした理論です。
歴史上「天才」と言われる人たちは、ある年代、特定の場所に集中的に登場することがわかっています。
統計学者のデヴィット・バンクスは、「多すぎる天才」という論文の中で、天才たちが出現する時代や場所は集中する傾向があると記述しています。
たとえば、紀元前440年から前380年のアテネでは、プラトン、ソクラテス、ヘロドトス、エウリピデス、アイスキュロス、アリストパネス。
1440年から1490年のイタリア・フィレンツェでは、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、ギベルティ、ボッティチェッリ、ドナッテロ。
シェークスピア時代のイギリスは、ベン・ジョンソン、エドマンド・スペンサー、フラシス・ベーコンといったようにです。
日本でも、幕末から明治維新にかけて、桂小五郎、坂本龍馬、大隈重信、高杉晋作、勝海舟、伊藤博文、大久保利通、西郷隆盛、吉田松陰、山形有朋といったすぐれた人材が同時代に活躍しています。
デヴィット・バンクスは、天才が同じ時代・場所に集中する条件として、次の3つを挙げています。
�多様な人間の交流がある場所
�教育と学習の新しい形を切り開いた場所
�リスクを取ることを支援する社会システム
僕は、才能がひとつの時代に片寄って登場するのは、「時代の空気」の影響を受けたからではないか、と考えています。
バニスターや野茂さんのような、一般の社会に大きな影響力を及ぼす人が一人登場すると、時代の空気が変わります。
「できない」という空気から、誰かが達成することで「自分にもできる」と時代の空気が変わり、結果的に、その時代に生きる人たちの限界が取り払われていくのです。
『限界の正体』SB Creative
サッカーでも同様で、中田英寿選手が日本人の海外移籍の先鞭をつけ、移籍の壁が取り払われた。
また、現代ほど、IT関連によって急激に変化している時代はない。
ITの世界においても、天才たちは多く出現している。
スティーブ・ジョブズ、ジョン・スカリー、ビル・ゲイツ、ゴードン・ムーア、アンディ・グローブ、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグ等々。
ITの変化とそのスピードはすさまじい。
ポケモンGOのように、一夜にして世界を虜(とりこ)にし、世界最大のゲームとなるものもあらわれた。
また、これからの世界は、どんな業種、職種においても、ITに関連した分野にからんでいなければ市場から退去を命じられる時代が来た。
まさに、時代の空気が変わったのだ。
その時代に生きる人々に無意識的に影響を与える「時代の空気」。
頭を柔らかくして、自分の限界を取り払いたい。
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為末大氏の心に響く言葉より…
社会の中で生きていると、かならず「限界」というものにぶつかるときがきます。
スポーツの世界にも、限界ととらえられていたことがありました。
「1マイル4分の壁」です。
長い間、1マイル(約1609メートル)を4分未満で走ることは、人間には不可能と考えられていました。
何十年にもわたって、アスリートたちがその限界の壁にぶつかり、医師は「無謀な挑戦は命を落とす」と警告し、エヴェレスト登頂や南極点到達よりも難攻不落といわれていました。
けれど、1950年代、ロジャー・バニスターというイギリス出身の陸上競技選手が登場し、世界の常識を書き換えます。
オックスフォード大学医学部の学生であったバニスターは、トレーニングに科学的手法を持ち込んで、1マイルを3分59秒4で走り、見事に4分の壁を破りました。
興味深いのは、そのあとです。
バニスターが1マイル4分を切ってから、1年のうちに、23人もの選手が1マイル4分の壁を破ったのです。
これまで人類の限界ととらえられていた、1マイル4分とは、決して肉体的な限界ではありませんでした。
1度、成功者を見たことで、この壁は破れないという思い込みが解除されたのでしょう。
バニスターによって、限界が取り払われたのです。
周囲の常識が限界をつくる例をもうひとつ見てみましょう。
元メジャーリーガーの野茂英雄さんです。
野茂さんがメジャーリーグへの挑戦を表明したとき、国内の野球関係者はこう考えていました。
「野茂の実力だと、アメリカでは通用しないだろう」
ですが、それも周囲の思い込みにすぎません。
松井秀喜さんが「野茂さんがいなければ、ほとんどの選手はアメリカに行けなかった」と断言しているように、野茂さんの活躍によって、日本人はメジャーリーグで通用しないという思い込みが外れ、今では多くの日本人が海を渡っています。
「努力を重ねても望む結果が得られない経験が続くと、人は『何をしても無意味だ』と思うようになり努力をしなくなる」
これを「学習性無力感」といいます。
アメリカの心理学者、マーティン・セリグマンが解き明かした理論です。
歴史上「天才」と言われる人たちは、ある年代、特定の場所に集中的に登場することがわかっています。
統計学者のデヴィット・バンクスは、「多すぎる天才」という論文の中で、天才たちが出現する時代や場所は集中する傾向があると記述しています。
たとえば、紀元前440年から前380年のアテネでは、プラトン、ソクラテス、ヘロドトス、エウリピデス、アイスキュロス、アリストパネス。
1440年から1490年のイタリア・フィレンツェでは、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、ギベルティ、ボッティチェッリ、ドナッテロ。
シェークスピア時代のイギリスは、ベン・ジョンソン、エドマンド・スペンサー、フラシス・ベーコンといったようにです。
日本でも、幕末から明治維新にかけて、桂小五郎、坂本龍馬、大隈重信、高杉晋作、勝海舟、伊藤博文、大久保利通、西郷隆盛、吉田松陰、山形有朋といったすぐれた人材が同時代に活躍しています。
デヴィット・バンクスは、天才が同じ時代・場所に集中する条件として、次の3つを挙げています。
�多様な人間の交流がある場所
�教育と学習の新しい形を切り開いた場所
�リスクを取ることを支援する社会システム
僕は、才能がひとつの時代に片寄って登場するのは、「時代の空気」の影響を受けたからではないか、と考えています。
バニスターや野茂さんのような、一般の社会に大きな影響力を及ぼす人が一人登場すると、時代の空気が変わります。
「できない」という空気から、誰かが達成することで「自分にもできる」と時代の空気が変わり、結果的に、その時代に生きる人たちの限界が取り払われていくのです。
『限界の正体』SB Creative
サッカーでも同様で、中田英寿選手が日本人の海外移籍の先鞭をつけ、移籍の壁が取り払われた。
また、現代ほど、IT関連によって急激に変化している時代はない。
ITの世界においても、天才たちは多く出現している。
スティーブ・ジョブズ、ジョン・スカリー、ビル・ゲイツ、ゴードン・ムーア、アンディ・グローブ、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグ等々。
ITの変化とそのスピードはすさまじい。
ポケモンGOのように、一夜にして世界を虜(とりこ)にし、世界最大のゲームとなるものもあらわれた。
また、これからの世界は、どんな業種、職種においても、ITに関連した分野にからんでいなければ市場から退去を命じられる時代が来た。
まさに、時代の空気が変わったのだ。
その時代に生きる人々に無意識的に影響を与える「時代の空気」。
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