浜松医大名誉教授、高田明和氏の心に響く言葉より…
わたしたちは成功したり、地位が上がったり、周囲に尊敬されることを望みます。
そして当然ながら、そのことを何も悪いことだと思っていません。
ところで、ブッダも達磨も「因縁の法則」ということを述べています。
「善因善果(ぜんいんぜんか)」といいますが、わたしたちの思うこと、行うことのすべてが「宇宙の貯金通帳」といわれる「業」に記録されます。
よいことをすれば善業として貯金され、それが幸運につながります。
一方、悪いことをすれば悪業として通帳の借金になり、不運につながるのです。
ブッダも達磨もこういっています。
失敗したり、悪いことが起こったりすると人はぺしゃんこに挫けるが、じつはそれは業の借金を払ったようなものだ、いつかはとり立てられなくてはならない借金を払ったのだから、借金なしになったと思えばよい。
一方、よいことが起こる、幸運に恵まれると有頂天になるが、それは今までの貯金を使ったようなものだ、だからますますよいことをして業の貯金をしなくてはならない、と。
これはとてもいい教えです。
つまり幸運ということは不幸につながりやすく、不運というのは幸福につながりやすいということになるのです。
ですから、今が幸せといって喜んでいられないということになります。
そこでいい気になれば足をすくわれるからです。
人生は山あり谷ありです。
このことを初めて悟られたブッダの驚きはいかばかりであったかと思うのです。
「生老病死」の「生」が苦諦の一つだということはこのことなのです。
生きることは不幸につながりやすいし、また成功することは「楽」になるということになります。
でも楽になるということは、じつはつぎに不幸に向かっているというのですから、喜んでばかりいられないということになります。
一方、失敗は苦しいということです。
でも、苦は幸運に近づいているということになります。
禅ではよく「楽中苦あり、苦中楽あり」などといいますが、このことです。
もし、あなたが今、苦しい思いをしているとすると、あなたは業の借金を払っていることになります。
ですから、幸運が目の前にきている、そう思ってよいのです。
一方、あなたが成功して、地位が上がったり、人からちやほやされるということは、業の貯金を現在使っていることですから、生き方に注意して、決して傲慢(ごうまん)にならないようにしなければなりません。
自慢したりして人を不快にしたり、心を傷つけたりしないようにしないといけません。
それを忘れると運を使い果たし、その先に失敗が待っています。
幸運が不幸につながるのです。
なんというどんでん返しでしょうか。
わたしはこのことがブッダの教えのもっとも重要なことの一つだと思っています。
過去にいかなる人、いかなる宗教人もこれに気づいた人はいませんでした。
このことに気づくことが「心が楽になる」最良の方法なのです。
『人生の目的は「心が楽になること」』新講社
功成り名を遂げた人が、転落するケースは多い。
一生使いきれないほどの収入を得ているのに、まだ足りないと強欲にさらに金銭を求める。
「好事もなきにしかず」という禅の言葉がある。
「良きことも、かえってないほうがよい」ということだが、普通なら良いことはあったほうがよいと思う。
人もうらやむような成功をして、莫大な富を得ることによって、傲岸不遜(ごうがんふそん)の芽が出て、まわりが見えなくなる。
成功したり、巨万の富を手に入れるということは、もっと「謙虚になりなさい」「人の幸せのために、お金や労力を使いなさい」「世のため人のために仕事をしなさい」という天からのメッセージ。
「不幸は幸運につながり、幸運は不幸につながる」
不運の時は決してくさらず、幸運の時はさらに謙虚に、を心がけたい。
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押忍
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