【人間には二つの脳がある】
リン・A・ロビンソン氏の心に響く言葉より…
ある起業家がこんな話をしてくれた。
新規のクライアントと仕事を始めようとしていたときのことです。
条件は申し分なかったのですが、先方に承諾の電話を入れようとするたびに、なぜか胃が重いような違和感が私を襲いました。
結局その仕事は辞退することにしました。
その後、仕事仲間からそのクライアントは筋金入りのクレーマーで、ものすごく難しいお客さんだという話を聞きました。
頭では引き受けようと思ったのですが、身体のほうが正しい判断をしたということですね。
あなたも、胃に違和感を覚えたことはないだろうか。
これは「何かが間違っている」ことを示す一般的なサインである。
もしかしたら、不適切な人を雇おうとしているのかもしれない。
チームが危険なプロジェクトに手をだそうとしているのかもしれない。
胃が緊張するときは、「危険!軌道修正せよ」というメッセージを、直観が肉体を通じて送ろうとしているのだ。
人間には二つの脳があるという考え方がある。
一つは二つの耳の間にある脳。
もう一つは、あまり知られていないが、内臓にある脳である。
この二つは互いに連絡を取り合っていて、頭が混乱すると胃に影響するし、その反対の場合もある。
今度、何かを決断するときには、自分の内臓の感覚に注意してみてほしい。
あなたの胃はその決断をよくないと感じているか、正しいと感じているか。
面接をした相手に採用決定を知らせようと考えたとき、胃がキュッとなるか、それともリラックスするか。
そのとき、次のような自問をしてみるといい。
●もっと気持ちが楽になる選択肢はないか
●いま決定をくだしてしまっていいのか。もう数時間(数日、数週間、数ヵ月)待ったほうがいいのではないか
●この決定をくだす前に、もっと情報が必要なのではないか
●全体的にピンとこないのか。それともどこか一部だけがおかしいのか
●どうすれば、この決断が正しいと思えるようになるか
虫の知らせとか、胸騒ぎという言葉があるか、「これから何かが起きる」と感じるときには、肉体感覚として表れることがある。
詳しく説明しようとすればキリがないが、いくつか具体例を挙げてみよう。
◆身体中が暖かく、心地よい
◆エネルギーがみなぎり、疲れをまったく感じない
◆背筋がゾクゾクする、鳥肌が立つ
◆胃がゴロゴロする、消化不良を起こす
◆急に身体全体がこわばる
他にもいろいろあるが、何らかの身体的な感覚を、本人が自覚できることはたしかである。
問題は、それを無視してしまうか、あるいは直感からのメッセージとして真摯に受け止めるかだ。
『人生のすべてを決める鋭い「直感力」』三笠書房
食物科学者ヘリベルト・ワツケ氏によると、人間の腸は脳のような働きをしているそうだ。
実際、人の腸には猫の脳と同じ1億もの神経細胞が存在しているとのこと。
味覚を感じ、人間の体に必要なエネルギー源を取り込む繊細で正確なシステム。
驚かれるかもしれないが、腸には成熟した脳がある。
管理職についている方はこう言われるだろう。
「別に新しいことではないですよ、知っています。『直観』のことを内臓感覚と言っていますし、判断が必要なときは使っていますよ」
みなさんは直観(内臓感覚)を実際に使っているし、役に立つものだ。
それは、内臓が大脳辺縁系と繋がっていて、互いに連絡し合って意思決定をしている。
腸は気分や感情、免疫系、さらには長期的な健康に関する化学的作用に影響を与える。
研究によれば、状況から新しい技を"学ぶ"ことすらできるそうだ。
こうした事実は、腸と脳の関連性を研究する神経消化器学という新しい分野からもたらされた知見だ。
下層部にある腸の脳は消化と防衛という独自の目的を持っており、上層部にある腸の脳は行動の統合と発生という目的を持っている。
以上(TEDGlobal 2010より)
大人でも子どもでも、ストレスによって胃が痛くなることはある。
失敗したときや、怒られそうなとき、大きなトラブルが発生したときなどだ。
そして、同時に、これはこのままでは「続けられない」、「うまくいきそうにない」と胃が重苦しくなったりすることがある。
日本には「腹」に関するいろいろな言葉がある。
「太っ腹」「腹に収める」「腹心の部下」「私腹を肥やす」「むかっ腹」「腹立ちまぎれ」「腹を抱えて笑う」「腹落ちする」等々だ。
これらの言葉も、腹(腸)が第二の脳だと知ればわかる。
虫の知らせとか、胸騒ぎという心のメッセージ…
なんとなく感じる「身体の言葉」に耳を傾けたい。
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