対談「喜怒哀楽の人生をどう生きるか」
五木寛之(作家)
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稲盛和夫(京セラ名誉会長)
(稲盛)
しかし、人間の心というのは、ともすれば感情に流され、本能に翻弄され、身勝手な自分、もしくは利己的なものになってしまいがちです。すべてのものに欲望、怒り、不平不満といった悪い感情をもって反応しながら生きてしまいがちです。
だからこそ、自分自身の心をコントロールして、良心に基づいて、理性的に行動することが大切です。
私は会社をつくってたくさん苦労もしましたけれども、45年ほど前につくっていただいた京セラという会社がここまで成長し、さらに20年前つくった第二電電(現KDDI)も急速に成長することができたのは、結局、そこで働く社員たちがともすれば悪い方向に傾きがちな心をコントロールし、心を常に美しい状態に保つように心掛けてきたことが大きいと思うのです。
やはり、人生、運命を変えていくのは心次第。心に思い描き、実行に移したことに従って、人生はよくも悪くもなると思っています。
・・中略・・
(五木)
生まれた赤ん坊は、オギャアと生まれた瞬間に死に向かって歩き始める。人間は死ぬために生まれてくるんだというのが僕の考えです。
そういうふうに考えることは、物事を暗く考えることでも寂しい人生でもない。そういうふうに自分の行き先というものをしっかり見据えていれば、きょう一日命があるということが本当に心の底からありがたいと思えるんです。
だから、僕は朝起きた時、そして夜寝る前に、「ありがとうございます」って口の中でつぶやくんです。限りある命だから、その一日がものすごく貴重に思えてくるのです。この一日をしっかり生きなければと。
温室の中で24時間人工光線に照らされている所では、一条の光が雲間から差してきたとしても、それを光明と感じて感激しないんですよ。真っ暗闇の中で、血が滲むようにして希望を探している。そこへ窓から一筋の光が差してくる。それを光明を感じて人は感動するんです。
ですから、たとえどんな逆境にあっても、そこには大いなる希望への出発点となり得るんですね。
※月刊『致知』2004年11月号「喜怒哀楽の人間学」より
致知出版社様メルマガよりシェアさせて頂きました。
押忍!
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