明治大学教授、齋藤孝氏の心に響く言葉より…
100歳まで生きることが、夢物語ではなくなってきました。
厚生労働省が発表した2017年の調査では、日本において100歳以上の方はいまや6万人強。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2050年には100歳以上の方が53万2000人に上ると予測されています。
「人生100年時代」という言葉が広まるきっかけにもなった『ライフ・シフト100年時代の人生戦略』によれば、「今20歳の人は100歳以上、40歳以上の人は95歳以上、60歳の人は90歳以上生きる確率が半分以上ある」といいます。
人類がいまだ経験したことのない長寿社会の到来…。
なかでも日本はその先頭を走っています。
お手本にすべき「先例」のない新たな時代を迎えているのです。
働き方にもパラダイム変化が生じています。
60~65歳で定年を迎えても、そこからの人生が30~40年ほどもあります。
「定年を迎えたら、後はのんびり過ごす」という生き方は、もはや現実にそぐわなくなりました。
60代からを「老後」と呼ぶには早すぎますし、「余生」と言うには長すぎます。
本来、「人生をどう生きるか」というのは思春期から青春期の若者たちがテーマということを考え直さざるを得なくなったのです。
スポーツ好きな私は、サッカーの試合は欧州リーグもチェックしています。
強豪チームの強さの秘訣、いい監督の力量がどこで出るかというと、ハーフタイムでの戦略の立て直し方です。
前半の戦いぶりを見て、いいところ、よくないところを冷静に分析し、後半の戦い方を考え直す。
調整力に長けた監督は、ハーフタイムに選手に的確な指示を与え、効果的な選手交代を行います。
前半が絶好調だったからといって、後半もそのままの勢いでいけるかというと、なかなかそうはいきません。
ちょっとしたことで一気に流れが変わることもあります。
前半とは打って変わった健闘ぶりを見せて、大逆転が起こることもあります。
最後に笑顔になれるのは、「ハーフタイム力」のしっかりしているチームです。
50歳という人生の折り返し地点で自分を見つめ直し、軌道修正することは、ハーフタイムで戦略の立て直しをすることと似ています。
ここまでの人生が、けっこう順風満帆に推移してきたという人も、うまくいかないことばかりだったという人も、終わった前半戦にこだわるのではなく、これから立ち向かう後半戦に向けて、気持ちを切り替える。
人生のハーフタイムでリセットしましょう。
リセットといっても、すべてを一新してゼロから新たな生き方を始めるわけではなく、これまでの自分の経験、実績、志向性などの蓄積のもとに、今後をどう生きるかを考え直すのです。
若いころに比べると、エネルギー値も若干落ちてきて、減速期に入っていることは否めないでしょうが、その分、この年齢になったからこその柔軟な対応力や深い思考力が備わっています。
『人生後半の幸福論』光文社新書
齋藤孝氏は、本書の中でこう語る。
『エネルギーを注ぐ対象を見つけ、心の張りを得るために、「趣味を持とう」「好きなことをやろう」とよくいわれます。
もちろん好きなこと、趣味があることは熱心にできますが、ものすごく好きなことでなくても、自分がそれをやることに「意義」が見出せて、心が動けばいいのではないでしょうか。
仕事というのはだいたいそういうものです。
やりたかったこと、好きなことを仕事にしていなくても、結果を出したいと思って全力で打ち込んでいると、それが張り合いとなり、内側からの充実感につながっていきます。
「好きなことかどうか」よりも、それをやることに「自分の心が動くかどうか」「積極的に関わっていけるかどうか」のほうが大きなポイントではないかと私は思います。
何かに対して、「やらなければいけないからやる」というしぶしぶのスタンスではなく、「自分がやらなきゃ、誰がやる」くらいの気持ちで主体的になる。
それが、内側から湧き出るエネルギーを枯渇させない秘訣といえましょう』
「好きなことを仕事にしなさい」、とはよく言われることだ。
だが、「そんなに好きでもないけど一所懸命やっている」という人も多くいる。
仕事も趣味もそうだが、好きか嫌いかということも大事だが、「長く続くかどうか」という基準も大切だ。
教育者の東井義雄先生に、「ほんものは続く、続けるとほんものになる」という言葉がある。
嫌いじゃないからこそ、長く続けられるし、長く続くということが、好きなことであり、また、 本物であるということの証明になる。
ハーフタイム力を身につけ、しっかりと人生の後半戦に備えたい。
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