プロフィール

2017年9月21日木曜日

本物の大人、本物の男、本物の人間

「高倉健の最敬礼」

今年の春、ある上場企業の経営者と私は
近所の喫茶店に入った。
彼は、しゃべり始めた。

「撮影現場にいたんです、僕は」
…大学時代、RKB毎日で木村班というのに入れられて、
ADのバイトをやっていたんです。

若い頃、勉強が面白くなくて、大学をやめました。
毎日、テレビ局で働きながら、将来はどうしようかと
悩んでいたわけです。

番組のロケが始まった日のことです。
「おまえ、高倉さんをホテルまで迎えに行け」
と木村さんから命令されました。

えっ、と思いました。
ひとりじゃ嫌だなあ、と。
周りにお付きの人がたくさんいるだろうし、
無作法をして怒られたらどうしようと…。

ホテルに行って、1階のエレベーター前で待っていたんです。
そして、ドアが開いたら、あの大スターの高倉健が
たったひとりでエレベーターに乗っていたんです。

呆然としていたら、私のそばに来て、
「高倉です。
よろしくお願いします」。

直角です。
90度の角度ですよ。

あわてて、私がごにょごにょ言いながら、
なんとなく頭を下げたら、
高倉さんは不動の姿勢で下を向いていました。
びっくりしました。

「こういう人が本当の大人だ」と感じました。
マネージャーも付き人もいなかった。

たったひとりで博多にやってきて、ホテルもひとり。
ロケの間もひとりで立っていました。
絶対に腰を下ろさない。

何の文句も言わない。
オレたちバイトには気を配って、飲み物とか食べ物をくれる…。

衝撃でしたねえ。
世の中には立派な大人がいるんだと思った。

だって、はたちかそこらの何もわからないガキに対して、
最敬礼して、ちゃんと尊重してくれる。
そんな人いないです。

バイト仲間とはあの頃、
「大人になったら高倉健みたいになりたい」と話しました。
いつの日か、立派な大人になるんだ、と。

…でも、すぐにはなれなかったなあ。
虚勢を張ってました。

自分に自信がなかったから、
人に頭を下げることができなかった。
でも、ある日、ふと高倉さんの最敬礼を思い出して、
「一からやり直そう」と決めたんです。

それから彼は変わった。
友人の父親がやっていた会社に入った。

年下の部下にこき使われながらも、一切、文句を言わなかった。
人に会ったときには最敬礼することにした。

年下のアルバイトやパートの従業員を大切にした。
態度のデカイ取引先にカッときたことはあったけれど、
高倉健の我慢を思い出して、じっと耐えた。

そのうちに働きが認められ、社長から
「関係会社の経営を立て直してくれ」と命令される。
私が会ったのはちょうどその頃だった。
初対面で彼は最敬礼した。

最敬礼し、なかなか頭を上げないから、
「丁寧な人だな」と感じた。
そして、10年経って、彼は会社を公開させることができた。

「高倉さんにお目にかかることは一生ないでしょう。
でもあのお辞儀を見ていなかったら、
自分はこうはならなかった。
高倉さんのおかげだと思う。
だから、作品はどんなものでも全部見ます」

出典元:
高倉健インタヴューズ プレジデント社


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