村上 和雄(筑波大学名誉教授)
※『致知』2018年7月号【最新号】
※連載「生命科学研究者からのメッセージ」P122
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今年、研究者人生満60年を迎えられた
筑波大学名誉教授・村上和雄さん。
その研究一筋の歩みは、生命の神秘さと
真摯に向き合った半生でもありました。
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2018年で私の研究人生は満60年の節目を迎えました。
この60年を振り返ると、時に自分の予想を超える
研究成果を上げることもできましたが、
そうしたことはひとえに人との出会いやご縁に
よるものであって、いまも感謝の念に堪えません。
また、私の歩みと生命科学の発展期とが
軌を一にしていたことも、大きな助けになりました。
そのおかげで次々と生み出される新技術を
研究に活用することができたのです。このように、
人と時に恵まれた60年であったというのが、
私の偽らざる実感です。
(中略)
サムシング・グレートがどんな存在なのか、
具体的なことは私にも分かりません。しかし
そういった存在や働きを想定しなければ、
小さな細胞の中に膨大な生命の設計図を持ち、
これだけ精妙な働きをする生命の世界を
当然のこととして受け入れることは、
私には到底できないことでした。
それだけに、私は生命科学の現場で研究を
続ければ続けるほど、生命の本質は
人間の理性や知性だけでは説明できる
ものではないと感じるようになりました。
進化生物学者の木村資生氏によれば、
この宇宙に一個の生命細胞が生まれる確率は、
1億円の宝くじが100万回連続で当たるくらいの、
とんでもなく希少な確率だそうです。となれば、
私たちの存在はとんでもなく「有り難い」
ものだと言うことができるでしょう。
さらに言えば、世界の富をすべて集めても、
ノーベル賞学者が束になってかかっても、
ごく単純な大腸菌一つ元から創れないのが現実なのです。
にもかかわらず、私たちの身体には、
約37兆個の細胞(最近の研究で明らかになった数字)
が存在し、お互いに助け合いながら、
喧嘩することなく調和を保って生きている。
これは本当に不思議なことです。
それだけに、我われは大自然の不思議な力で
生かされているという側面を決して
忘れてはならないと思うのです。
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押忍!
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