下村澄氏の心に響く言葉より…
柔道の山下泰裕のように受け身に徹してほかの選手たちと交わり、積極的に情報を収集することは、見方を変えれば、対戦相手を自分のコーチにし、味方にすることだといえる。
敵を味方にするのだから、勝てる可能性が高くなるのは当然である。
成功者は自分に足りないもの、自分ができないことは、ほかの人の能力を使って成果をつかみ取っている。
その要諦は山下のそれと同じだといえる。
「あんた、どう思う?」
何かといえばそう発する松下幸之助さんの口癖は、受け身の中の積極性を象徴している。
そういえば、成功者は共通して魅力的な笑顔を持っていることに気づく。
笑顔に惹きつけられて人を心を開き、自分の持てる能力をその人のために提供したくなるのかもしれない。
笑顔は受け身の中の積極性のシンボルなのである。
アンドリュー・カーネギーといえば一代で莫大な財を築きあげたアメリカの鉄鋼王である。
彼は功成り名遂げると事業から身を引き、今度は築き上げた財を使うことに意を注いだ。
カーネギーが財を投じた慈善事業は数知れない。
芸術の殿堂として今も残るカーネギー・ホールはその一つである。
私はアンドリュー・カーネギーについては詳しくは知らないが、どんなに厳しさを備えていても笑顔だけは人を惹きつけずにはおかない魅力に溢れていただろうと想像する。
というのは、彼の成功はまさに人の能力を巧みに使ったことにあったからである。
受け身の中の積極性。
アンドリュー・カーネギーもまた成功者に共通の特質を備えていたのである。
そのことを如実に示すのが彼の墓碑銘である。
彼の墓碑にはこう書かれているのだ。
「己より賢明なる人物を周辺に集めし男、ここに眠る」
『人間の品格』PHP
人から頼まれたことを、文句を言わず、ニッコリとして引き受け続けることは、「受け身の中の積極性」だ。
特に、若いときの頼まれごとは、「試され事」だと思って積極的に引き受けることが大事だ。
事の大小に限らず、「これをやってくれないか」「これを引き受けて欲しい」と言われたとき、不平や不満を言わず気持ちよく引き受ける。
それを続けていくと、自分は世の中からどんな風に必要とされているのかという、使命や天命のようなものが見えてくる。
反対に、何かを頼まれたとき、嫌な顔をしたり、言い訳をしたりして、結局のところ引き受けない人は、だんだんと頼まれなくなる。
その結果は、定年後になるとはっきりとわかる。
定年後、何もやることがなくてまったくヒマになってしまうか、現役のとき以上に頼まれごとで毎日スケジュールがいっぱいになるかだ。
その違いは表情にも表れる。
頼まれやすい顔と、頼まれにくい顔だ。
頼まれやすい顔は、いつも笑顔だ。
頼まれにくい顔は、いつも不機嫌。
頼まれごとを笑顔で気持ちよく引き受け、受け身の中の積極性を身につけたい。
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押忍
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