田中真澄氏の心に響く言葉より…
アメリカと比べて、日本が大きく遅れをとっていることの一つに、老年学(ジェロントロジー)の研究とその成果の普及があります。
人間の加齢と高齢者の生き方を研究する老年学が、アメリカでは35年前から盛んです。
アメリカにはすでに500の大学で老年学が講義されており、老年学を専攻する学部が31あります。
その結果、いろいろな関係機関で老年学を学んだ人々が数多く活躍し、老年学の研究成果を世に広めています。
一方、日本の大学には、老年学を学ぶ学部・学科どころか、教科書すらありません。
それだけに一般の私たち日本人は、老後の人生に対する最新の研究成果を知ることができず、老年学の専門家の指導も受けることができずにいます。
したがって日本の多くの人は今だに古い老後観のまま、自分の老後を考えています。
最近の老年学は、高齢者とは英知を備えた貴重な社会的資源(社会的に役立つ人材)とみなし、高齢者も社会貢献をしながら、生き甲斐のある人生を送るべきであり、そういう日々を歩むことが高齢者の成功(サクセスフル・エイジング)である、という新しい概念を提唱するようになっています。
つまり、老後は趣味を生き甲斐にするのではなく、仕事を生き甲斐にしようという考え方が、老年学の基本になってきているということです。
しかし、日本では、この新しい概念で自分の老後の人生設計している人は、まだまだ少数です。
ほとんどの高齢者やその予備軍である定年退職者は、社会的な貢献をするために、老後、自分はどのような仕事をなすべきかという、仕事に対する積極的な準備も認識もなく、ただ年金と退職金を当てにする社会保障制度依存の姿勢に終始しています。
かつてアメリカのスタンフォード大学が90歳を過ぎた高齢者に「自分の人生で何が悔やまれますか」という調査をしたところ、その回答の上位3項目は次の通りでした。
1. もっとリスクを負えばよかった。
2. もっと何かを学べばよかった。
3. 子供を育てる以外にももっと何かをすればよかった。
このアメリカの高齢者が抱く後悔の念は、これからの日本の高齢者にもそのまま当てはまると思います。
なぜならば、日本の高齢者もだんだん後半の人生においても生き甲斐を求めるようになってきているからです。
その生き甲斐とは何かについて、哲人はそれぞれの著書に書き残していますが、最も多い答えは、「生涯を貫く自分の仕事を持つ」ということです。
自分の得手とする仕事(天職)に生涯従事できれば、結果的に、その行為は世のためになるわけですから、自分にとってはもちろんのこと、社会的にも素晴らしいことです。
定年後、自分の仕事を持つことなく社会的に存在意義の乏しい生活を長く続けていると、次第に活力をなくしていきます。
やはり人間はどんなに年を重ねても、自分が打ち込める仕事を持ち、社会的な責任を全うしてこそ、最も生き甲斐のある日々を享受できるというものです。
このことは、あらゆる時代に当てはまる、不変の真理です。
『臨終定年』ぱるす出版
『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)―100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社 )には、次のような一文がある。
『人が長く生きるようになれば、職業生活に関する考え方も変わらざるをえない。
人生が短かった時代は、「教育→仕事→引退」という古い3ステージの生き方で問題なかった。
しかし、寿命が延びれば、2番目の「仕事」のステージが長くなる。
引退年齢が70~80歳になり、長い期間働くようになるのである。
人々は、生涯にもっと多くのステージを経験するようになるのだ。
選択肢を狭めずに幅広い進路を検討する「エクスプローラー(探検者)」のステージを経験する人が出てくるだろう。
自由と柔軟性を重んじて小さなビジネスを起こす「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」のステージを生きる人もいるだろう。
さまざまな仕事や活動に同時並行で携わる「ポートフォリオ・ワーカー」のステージを実践する人もいるかもしれない』
まさに、田中真澄氏の言う、
「生涯現役こそ最高の年金」であり、「人生は未完に終わるもよし 仕事の途中で天寿を全うする これが最高の人生」。
生涯を貫く自分の仕事を持つ人生を目指したい。
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押忍!
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