翁のことばに、方位で禍福を論じたり、
月日で吉凶を説いたりすることが昔からあって、
世間ではこれを信じているが、
この道理はありえない。
禍福吉凶は方位・日月などとは関係のないもので、
これを信ずるのは迷いだ。
悟道家は「本来東西なし」とさえいうではないか。
禍福吉凶というものは、
人それぞれの心と行いとが招くところに来る。
また過去の因縁によって来る場合もある。
ある名僧が強盗にあったときの歌に
「前の世の借りを返すか今貸すか
いずれ報いはありとしぞ知れ」
とよんだとおりだろう。
決して迷ってはならない。
だいたい盗賊は鬼門からはいるわけではない、
悪日ばかりに来るのではない。
戸締りを忘れれば賊ははいってくると思え。
火の用心を怠れば火災が起るだろう。
ためしに戸をあけておいてみるがよい、
犬がはいってきて食いものをあさるだろう。
これは眼前わかりきった話だ。
古語(易、坤の卦の文言伝)に
「積善の家に余慶あり、
積不善の家に余殃あり。」とあるが、
これは万古を貫いて動かぬ真理だ。
決して疑ってはならない。
二宮尊徳
◆渋沢栄一、豊田佐吉、松下幸之助が尊敬する
「代表的日本人」の教えを分かりやすい現代語訳で学ぶ
『二宮翁夜話』(福住正兄・原著、佐々井典比古・訳注)
致知出版社様メルマガよりシェアさせていただきました。
押忍
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