放送作家・戦略的PRコンサルタント、野呂エイシロウ氏の心に響く言葉より…
大企業への就職活動に失敗した僕が放送作家を目指した理由は、比較的自分が得意な分野でお金が稼げて、かつ楽しそうな職業だと思えたからです。
楽しそうだというのはおまけの理由で、第一義はお金を稼ぐこと。
僕が今でもなお放送作家としてせっせと原稿を書く目的は、ヒットを飛ばしてお金を稼ぐことにあります。
ところが、「放送作家になること」が目的になっている後輩が結構いるのです。
放送作家になることを目的にしてしまえば、小さな仕事が来た段階で目的は達成されてしまうから、大きく伸びていけません。
実際に、いくつかの番組に関わった後すっかり仕事が減ってしまって、年収200万円程度しかとれずにる自称「放送作家」がゴロゴロいます。
医者になりたい。
弁護士になりたい、デザイナーになりたい。
かっこよくて聞こえのいい職業につくことを目的にしている人が、あなたの周りにもいるのではないでしょうか。
しかし、職業は目的ではなく手段です。
その手段の先にあるものこそ目的なのです。
医者であれば「亡くなった父親と同じ肝臓病の患者を一人でも多く救いたい」というようなことです。
そこを勘違いしてしまうと、とても不毛な人生を送ることになります。
結婚にたとえてみるとわかりやすいでしょうか。
あなたにとって結婚する目的はなんでしょうか。
好きな人と一秒でも長く一緒にいること。
子どもを持って温かい家庭を築くこと。
もっと現実的に、健康管理をしてくれる人が欲しいなどというのもあるでしょう。
こうした目的はどれも、結婚した後にかなえられるものであり、ずっとかなえられ続けていくものです(不仲にならなければという条件付きですが)。
ところが、世の中には、「結婚すること」を目的にしてしまっている人が男女問わず大勢います。
この場合、結婚した瞬間に目的は達成したのだからすぐに離婚すればいいのですが、そうはいきません。
なんのために結婚しているのかわからない不毛な同居生活を、死ぬまでダラダラ続けることになるのです。
ビジネスは、一人で行うことはできません。
お互いに目的を持った人たちが集まり、それぞれの目的を達成しようとすることで成立します。
だから、自分の目的はきちんと開示すべきだし、相手の目的もわかっていなければなりません。
それを曖昧にすると、みんながアンハッピーになります。
ところが、往々にして、お互いの目的をきちんと確認しないまま、一緒にビジネスを始めてしまうのです。
とくに、金銭的な面について日本人はストレートに言うことを避ける傾向にあり、後々禍根を残します。
仲がいい友人とのビジネスが失敗しやすいのは、お互い「わかってくれているはずだ」という甘い読みがあるからです。
自分の目的と相手の目的には、合致する部分もあるし異なる部分もある。
その異なる部分について、「わかってくれているはずだ」と考えるのは、非常にまずい。
相手の目的をかなえてあげれば、その対価としてお金が儲かるというシンプルな法則を、僕は学生時代のアルバイト経験を通して学びました。
お金を払ってくれる相手の目的にシンプルにフォーカスする。
ここを間違えなければ、ほとんどのことは解決します。
もし、相手の目的が掴みにくいと感じたらどうするか。
答えは簡単。
聞けばいいのです。
『終わらす技術』フォレスト出版
南の島のビジネスマンという、有名な寓話がある。
あるエリートビジネスマンが、南洋の島にバカンスでやってきた。
そこで、ヤシの木陰で寝転んでいる地元の漁師と出会った。
「どうして仕事もせず、昼間からのんびりと寝転んでいるんだい?」と聞くと、
「午前中に漁を何時間かしたらそれだけで食べていけるんで、休んでいるのさ」と漁師。
「なぜ、もっと働かないのだい?そうすればもっと稼げるのに」とビジネスマンがいうと、
「もっと稼いでどうするんだね」と漁師。
「もっと稼いで、お金をためて、もっと大きな漁船を買って、人を雇い、それを加工する工場も建てることだってできる。そうして、会社をつくって、それを大きくして、やがて会社を上場する。そして、その株を売って多額のお金を手に入れることができる」
「それから、どうするんだい」と漁師。
「そうしたら、もう働く必要はない。毎日、のんびりとバカンスができる身分になれる」とビジネスマン。
「それなら、もうとっくにやってるよ」と漁師が答えたという。
「病気を治したい」という目的も、「お金を稼ぎたい」という目的も、すべての目的にはその先にある、本当に叶えたい真の目的や夢がある。
何のために病気を治したいのか、病気を治したあとに何をしたいのか、あるいは、何のためにお金を稼ぎたいのか、お金を稼いだあとに何をしたいのか、ということ。
目的の先にあるものを考えない人は多い。
「本当に大切なものは」
「心から好きなことは」
「本当にやりたかったことは」
常に、目的の先にあるのものを考える人でありたい。
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