メタップス、佐藤航陽氏の心に響く言葉より…
「飛行機の実現までには百万年から一千万年はかかるだろう」
ニューヨーク・タイムズがこの記事を掲載してわずか数週間後、ライト兄弟は人類で初めて空を飛び、この予測を覆しました。
一流紙でジャーナリストを務めるほどのエリートが、なぜそんなことを自信満々に書けたのだろうと、当時の人々は笑いました。
しかし、彼らもまた、こう考えていました。
「宇宙船?そんなものは夢のまた夢だ」
現代を生きる私たちも、未来を見誤るという意味では、宇宙船を夢と考えた人たちを笑うことはできません。
現在日本で28000万(2017年9月)を超えるユーザー数を誇るFacebookですが、「実名登録なんて日本でははやらない」と言われていたのは、ほんの数年前のことです。
今では多くの人が使っているiPhoneにしても、発売当初は「おサイフケータイが使えない」「赤外線がないなんてありえない」などの理由から、はやらないという意見が多数派でした。
これから私たちの社会がどう変化していくのかは、今の社会を真剣に眺めるだけではわかりません。
巷にあふれる未来予測本を読んでも、わかることはないでしょう。
私たちはいつも未来を予測し、そして外し続けてきました。
ビジネスの世界、特にテクノロジー産業のなかにいると、今や数ヵ月先のことですら予測するのが難しくなってきています。
市場の変化するスピードが速すぎるのです。
その背景のひとつとして、インターネットが情報と資本の流動性を一気に高めたことが挙げられます。
インターネット登場以前は、ビジネスの多くが国内で完結し、情報の流通速度も遅く、市場の変化は、規模もスピードもとてもゆるやかでした。
ところが、インターネットの登場によって、産業の構造が急速に再構築されるようになりました。
事実、ここ数十年、名だたる大企業が倒産し、逆に聞いたこともないような企業がまたたくまに巨大なグローバル企業に成長するということが繰り返し起こってきました。
マーク・ザッカーバーグがハーバード大学の学生寮でSNSをつくり、Facebookを創業したのは2004年です。
その後ユーザーが急増し、2017年現在、20億人が使う世界レベルのインフラのようなサービスにまで発展しています。
そして今日、Facebookの企業価値は50兆円をこえます。
これを上回る企業は、日本にはもうありません。
《テクノロジーの進歩は、起業家や投資家すらも置き去りにしつつある》
IT業界にいればこのスピード感にも慣れてくるのですが、あらためて振り返ってみると、これはとてつもない速さです。
これまでの何十年の積み重ねがたった数年でひっくり返ります。
そして、今後もテクノロジーの進歩と市場の変化のスピードは、指数関数的に上がっていくことでしょう。
こうした進歩を牽引しているのはGoogle、Apple、Amazon、FacebookなどIT業界の巨人と呼ばれる企業です。
注目すべきことに、彼らが投資する領域は、その他の起業家や投資家が投資する領域とずれがあります。
Googleは、他の起業家や投資家が手がけるよりかなり早い段階でロボットや人工知能への投資を積極的に行ってきましたし、Facebookも同様です。
なぜIT業界の巨人だけが未来を見通し、その他の企業、そして投資家までもが遅れてしまっているのか。
その理由は、巨人たちが最先端の研究者を自社内に囲い込み、クローズドな状況で開発を行っている点にあります。
最先端を走る企業は、大学の教授や研究者をスカウトし、企業内のラボで好きな研究をさせています。
また、起業家や投資家が技術の進歩に追いつくことが難しくなってきているのにはもうひとつ理由があります。
インターネットがデータサイエンスから自動車、金融まで、あらゆる産業に空気のように浸透していった結果、必要とされる知識がより広範囲にわたってきているのです。
テクノロジーの進歩のスピードは、今やほとんどの一般の人々の認識の限界を超えてきています。
『未来予測の技法』ディスカヴァー
佐藤氏は本書の中でこう語る。
『変化を見抜くことが難しい時代だからこそ、未来を的確に予測し、先回りできた企業と個人が最終的には勝利を収めるのです。
ダーウィンの言葉を翻訳するならば、まさに、現代は「変化に《先回り》したもののみが生き残ることができる」時代だと言えるでしょう。
《適切なときに適切な場所にいることが、リターンを生む》
テクノロジーの進歩があるシステムを時代遅れにしてしまうことがあるように、市場の急速な変化によって、かつて自分が選んだ道が最適解ではなくなっているということはたびたび起こります。
ひたすらに現状の効率化を続けることは、目的地への近道を探すことを放棄した思考停止の状態といえます。
「どうすれば現状のやり方を効率化できるか」を考える前に、「今も本当にそれをやる価値があるのか」を優先して考えるべきなのです。』
『GoogleやFacebookなどシリコンバレーの一部の企業は、創業者自身がコンピュータサイエンスに精通しているため、それぞれのトレンドの関連性と全体像がつかめています。
人々が流れ星を慌てて指差しているときに、彼らはもう次の流れ星がどこに現われるかを突き止め、悠々と待ち受けているのです。
他の人にとっては、関連のない「点」でしか見えていないものが、彼らには予測可能な「線」として見えています。
Googleが自動運転をはじめたとき、「なぜ、検索エンジンの会社が?」と不思議に思った人は多かったと思います。
検索エンジンを「点」として捉えていては、「自動車」という別の「点」との関係は見えてきません。
しかし、インターネットの性質と「世界中の情報を整理して誰にでも利用可能にする」という彼らのミッションを理解していれば、このふたつの「点」が、一本の「線」として見えてきます。』
佐藤氏は、具体的な未来予測は不可能だが、その「パターン」は予測できるという。
「人々はどのように行動するか」「テクノロジーはどのように発展していくのか」「どのように未来の方向性が決まっていくか」といったことについて繰り返し描かれているパターンを明らかにし、それをもとに、未来社会の全体的なトレンドやメカニズムを探っていくことができるからだという。
ディズニーにはユーザーの「感動のパターン」がノウハウとして蓄積されており、そのフレームワークに沿って映画がつくられているそうだ。
未来予測の技法を少しでも多く身につけたい。
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